雪舟えまさんの『プラトニック・プラネッツ』を読みました。
キラキラして素敵な装丁のこの本は、開いてもそのキラキラを失わない素敵な世界を作り出しています。
非現実の世界でありながら、胸をつく言葉や柔らかい風がいくつもいくつも吹き抜けていく。雪舟えまさんの表現はとても美しいと思います。
近未来での少し変わった不思議な世界とパラレルワールドで織りなす物語。
主人公、すわのが恋人である休之助と別れ、自分の道を歩んでいく成長のお話。
登場人物すべて一風変わっているけれど、全員を好きになってしまいそうなほど、優しさと穏やかさで溢れています。
※以下、ネタバレあります。
全く、芽が出なかった休之助が、漫画の賞を取った頃、すわのは自分のやりたいことをみつけ、休之助の元を離れていきます。それは「休之助はもう私がいなくても大丈夫」と言う思いと、自分を貫いてまでやりたい何かを見つけた喜びがあったから。
すわの自身からみれば大きな決断だと思うのですが、そんなことをしたら休之助はどう思うのかしら?とドキドキしながら読み進めていくと、あれあれ?休之助がわりと素直に受け入れていてビックリ。
休之助がどういう人か?がだんだんわかり始めるとその辺りもまあ納得がいったけれど、休之助って変に素直と言うか無垢と言いますか…すわのが好きなんだろうなぁ、ずっと。
飛行船から光の筒がびゅーっと伸びてそこから人が降りてきたり、棺が運ばれたりするのです。うわぁ、なんかすごい。想像すると不思議でしかない光景。
葬祭会社で働く楯にすわのは惹かれるのですが、その楯は人当たりの良い素敵な人。けれど、楯はやっぱり普通ではなく、あちらの世界の入口や断層にも行けるし、何より「誰も好きになれない」人でした。
この「誰も好きになれない」っていうのがわかるようで、わからないようで、わかる?わからない?が今も私の頭の中をぐるぐると回っています。雰囲気としてはわかるけれど、なかなか未知の世界なり。
人の心は変わるんだ。心が離れたのに惰性で仕事をすることのほうがよっぽどいいかげんだと思いませんか。
夜な夜なつるんで、朝まで語り合っても。どんなに長い時間をともにすごしても。この人は抱きしめてくれることはないんだって思うと、ふしぎな気持ちになります。わかっているはずなのに。
こんな少し切ない言葉も随所に散りばめられています。
それからこちらの言葉はこないだの皆既月食の時にぶつぶつ呟きたかったです!
(私のところは雲が多くて見えなかったんだけど!)
月の光がダイレクトすぎて、月光焼けしそう。帽子がほしいくらい。
月の光で髪を洗うようにすると、目が覚めたとき、頭の周りにここの余韻が残ってるような感じがするんですよね。
月の光で髪を洗うとかそんな発想なかったなぁ。
皆既月食言わず、月が美しく輝く日に試してみたくなる。それぐらいには夢見がち。
ギスギスしたところがなく、ふわふわと心地良い雰囲気のまま読み終わる。
読み終えた後、世界が少し違って見える。
そんな気持ちになりたい方はぜひ読んでみて下さいな♪
雪舟えまさんはこちらもオススメです。↓
『バージンパンケーキ国分寺』 雪舟 えま - バンビのあくび