バンビのあくび

適度にテキトーに生きたいと思っている平民のブログです。

まるでプリズムのよう

f:id:bambi_eco1020:20141203204858j:plain

小学校で行われたマラソン大会を観に行った。

息子も娘も運動は得意な方ではなく、息子からは「観に来なくていいよ」とずっと言われ続けていた。だが、数日前に「やっぱり観に来てよ」と息子は私に言った。

「目標はあるの?」と問いかけると、しばらく考えてから「何位というのはないんだけど、ヒロくんより早くゴールしたい」と言った。

ヒロくんは息子の親友で、私から見ると運動能力は大差ないように思えるのだが、息子は1年生の時からずっとヒロくんより早くゴールをしたことがなかった。人と比べるのは・・と言う人もいるかも知れないが、明らかに後ろから数えた方が早い順位の2人はお互い「あいつより速く走ろう」と競い合っているからこそ完走している良きライバルだった。

冷たい風がぴゅうぴゅうと吹いている中で、まずは1年生の娘が走り出した。1年生のマラソンはみんながぴょこぴょこと走っているヒヨコのようで速くても遅くても可愛らしい感じがした。娘も歩かずに最後まで完走していたし、私を見つけて微笑んだので嬉しかったんだと思う。

そして6年生の息子が走り出した。スポーツをやっている子は馬のレースでも見ているかのように、土ぼこりをたてながらガッガッガッと土を蹴る足音をさせ、あっと言う間に私の前を通り過ぎて行った。息子はと言うと、一番後ろの方でテケテケテケといつものペースで走っていた。校庭を2周し、学校の外へ出て2周するコースだったのだが、校庭を出るまで息子はずっとヒロくんより後ろを走っていた。学校の外を1周して帰ってきた時もまだヒロくんより後ろを走っていた。その差は15mくらいあったと思う。息子が始終ペースが変わらない走り方だというのがわかっていたが、差がだいぶ開いていたのでヒロくんより前に出るのは難しいかも知れないと思った。

しばらくして馬のような走りの男の子達がゴールを目指して次々にやってきた。皆、ラストスパートが素晴らしく最後の最後まで順位の変動がありとても見ごたえがあった。先頭集団がゴールし、中盤の男の子達もゴールし、そろそろ息子が来るかなと待っているとテケテケテケとスタートからほぼ変わらない姿の息子が校庭に入ってきた。その時に息子がヒロくんより前にいることに気がついたのだ。速い足取りではないけれども抜かされないようにラストスパートをしているのもわかった。そして最後まで気を抜かずに息子がゴールしたのを見た時にじわっと目に涙が浮かんできた。

何事にも要領の良い方ではないけれどいつも着実に一歩一歩ゆっくりと進んでいく息子が、6年かけてやっとヒロくんより早くゴールが出来た。色々な要素が絡み合った結果かも知れないけれど、その事実は彼にとって大きなモノになったのではないかと思う。

 

目に浮かんだ涙が溢れそうになったので慌てて手で拭った。

1位でも2位でもないビリに近いような成績でも私にしか感じられない想いがあった。

また涙が溢れそうになったので私はすぐに歩き出し顔を空へ向けた。

見上げた空がばかみたいに真っ青だったので少し笑い、手で涙を拭いながら顔をマフラーにうずめた。

畑でおばあさんが大根を抜いていた。

おじさんが犬の散歩をしていた。

当たり前の日常は微妙に変化し私に彩りを与える。

 

まるでプリズムのようだと思った。