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バンビのあくび

適度にテキトーに生きたいと思っている平民のブログです。

ウキちゃんと友人

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画像、まったく本文と関係ありません。

校庭に半分ぐらい埋まっているような話だと思っていただければ……。

 

 ***

ウキちゃんという女の子がいた。

ウキちゃんとは小学校1年の時に同じクラスになった。ウキちゃんは頭が良く、それから字が上手で絵も描けて運動もそれなりにこなせるすごい子だった。ウキちゃんはなんでもこなせたけれど、そういったことを鼻にかける子ではなかったので、友達も多かった。私も少しずつ仲良くなって放課後、一緒に遊んだりもした。

ウキちゃんは遊びにくるといつも漫画を読んでいた。複数人で遊んでいてもいつの間にか漫画を読んでいた。ウキちゃんと縄跳びをした記憶より、ウキちゃんが真剣に漫画を読んでいる顔の方が鮮明に思い出せるぐらいだ。

ひとりだけ違う行動をしていたら、それに不快感を示す子が出そうなものだけど、ウキちゃんが漫画を読んでいても誰も何も言わなかった。なぜなら、ウキちゃんの家は漫画が禁止されており、家に一冊も漫画がなかったからである。みんなそれを知っていたから、ウキちゃんには思う存分漫画を読んでもらおうと思っていた。これは暗黙の了解だった。

ウキちゃんのお母さんは教育熱心な方で、家にある本は図鑑や偉人の本などしかなかった。当時、お誕生日会を開くのが流行しており、ウキちゃんの誕生日会に呼ばれたことがあった。大抵の家は、誕生日会に来てくれた子にサンリオなどの可愛らしい鉛筆やノートをプレゼントのお返しとして渡していたが、ウキちゃんからもらったお返しはジャポニカ学習帳だった。実用的だし、ウキちゃんの家の事情もなんとなく理解していたので、誰も何も言わなかったが、ウキちゃんだけはちょっぴり恥ずかしそうだった。

ウキちゃんは一世代前ぐらいなのではないかという服を日常的に着ていた。ウキちゃんに聞いたところによると、ウキちゃんは遅くにできた子だから、お母さんがみんなのお母さんより年を取っているので、服装が地味なんだと言っていた。そのときはふうんって聞いただけだったけれど、親の年齢どうこうの前にウキちゃんのお母さんはあんまり服に興味がなかっただけのように思った。

それぞれの家庭にはそれぞれのルールがあり、普通というものは存在していないと思うのだが、それを踏まえてもあの頃のウキちゃんはみんなの家とはちょっと違っていた。でも、ウキちゃんはごく普通、いやあれだけみんなに溶け込んでいたことを思うと、やはり賢い子だったのだと思う。

私が思う賢い人の像は色々あるのだけど、そのひとつに知識をひけらかさないというのがある。自ら色々語らなくても賢い人は行動や第三者との関わりを見ていたらなんとなくわかってしまうものだ。

 

 

先日、息子に「もうエレベーターはオタクのレベルだよね」という発言をしたら、「違うよ。僕はオタクじゃなくてマニアなの」と言われてしまった。

何が違うのか聞いてみると、オタクは自分が興味あることをただ延々と話すのに対して、マニアは知識こそあれど、聞き手ありきで話をするということだった。要はどれだけ好きでも自分本位にならないのがマニアってことらしい。

これを自分に置きかえて考えてみると、私は絵本が好きなのだが、聞いてくれる人がいるとオタクレベルで話してしまっていることがあるなぁと少々反省した。普段、話せる段になることがないので、話せる相手がいるとここぞとばかりにうんちくを垂れるという恥ずかしいやつである。これからはマニアに近づけるように一呼吸おいてから話していこうと思った。

それを思うと、私の友人は博識な人なのに全然ひけらかさない。こないだ某牧場で個性的な社長さんの話を聞いた時も都内のホテル名だとか料理人の名前がいくつも出てきたのに、友人はたいてい知っており、上手く話を合わせていた。「よく知ってるね。あなた、料理人かなにかなの?」と社長さんが尋ねるほどであった。

だが、私は友人が料理はまったく出来ないことを知っていたので、社長さんの発言を聞き、心の中で大笑いしていた。「知識はあるけど、その人、料理は全然ですよ、うはは」って。なんて質の悪い人であろうか、わたしってヤツは……。

友人は社長さんの発言を何事もなかったかのように交わし、また上手い相槌を打っていた。それを見て、ああ、この人は普段はあまりたくさん話す人ではないけれど、こうやって見てるとかなり賢い人なんだなって思ったのだ。以前から賢いとは思っていたものの、目の当たりにしたことで友人がちょっとだけ光って見えた。その日、友人がいつも以上に二重だったから光ってみえたのかも知れないけれど、ここは賢かったからで押し通したい。いや、押し通させてくれって思った。

あとから友人にやっぱり賢いわーと伝えつつ、「でもさ、料理人とか聞いてきたのは面白かったね。全然料理できないのにね。あれもうまくかわしてたけどさ……」と笑いながら話してみた。

「え?料理人とか言ってた?」

「社長さんが言ってたじゃん?そんなに知ってるなら料理人なのって」

「全然聞いてなかった」

「え?」

「え?」

 ちょっとだけ光って見えたのはやはり幻だったのかも知れない。

だが、賢いからってあまりにも完璧すぎると疲れそうなので、これぐらいが程よいのだとも思った。「親しみ」という面で考えるとウキちゃんもそうだったなって思い出した。

ウキちゃんも友人も「賢い」としか捉えていなかったけれど、そこには人徳もあるのだろう。

 

私にはそういったものは装備されていないけれど、こんな人達と関われていることは喜ばしいことであると、今、思っている。

 

 

 

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