あの子は言った。
「テレビも見ないし音楽にも興味ない、出かけることにも興味ないし休みの日は引きこもってます」
趣味があってもなくてもどうでも良いのだが、生きていくうえで何事にも興味を示さないというのが私には理解できそうにもない。
私が見ている世界は興味で溢れていて私が何人いても足りないくらいなのだから。
可愛い絵も美しい街並みも不思議な言葉で綴られた本も何もかもが興味深い。
花も虫も転がっている石ころも可愛らしくて面白い。
登校するこども達の声を聞きながら洗濯物を干している時間も愛おしい。
職場で言い争って辛くなったとしても意見の相違を考えるのは嫌いじゃない。
わたしと同じ考えをもったクローンはどこにもいないのだとはっきりわかる瞬間はほんの少し寂しくてほんの少し嬉しい。
鼻がむずむずすれば春を感じ、額に汗がにじめば夏を知る。そして指先のかさつきがひどくなれば冬の足音が聞こえてくる。
あれ、秋はどうやって感じているのか。
そんな疑問を考えている時間が楽しいと思えるぐらい、私の心は安っぽくてプラスチックのチェーンリングぐらい割れやすい。
割れたリングは新しいリングと入れ替えて、また、つないでいく。
延々と繰り返される行為に飽きたころ、わたしは興味を失うのだろうか。
おそらく飽きることを知らないので生きている限りは何かを探してずっと彷徨っているような気がする。
私が見ている世界は興味で溢れているのだ。
世界が変わらない限りは。