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バンビのあくび

適度にテキトーに生きたいと思っている平民のブログです。

自転車で坂をのぼるあの人に向かって

思った

鈴鹿サーキットで大きな大会が催されると近鉄白子駅付近は混雑する。

鈴鹿市の人口は約20万人なのだが、鈴鹿で毎年開催されるF1日本グランプリの来場者数は3日間合計で16万人にもなる。決勝がある最終日だけでも8万人の人が訪れる。普段はのんびりとした街並みだが、このときばかりは人が溢れかえり、交通渋滞も至る所で発生する。最近はサーキット近辺を交通規制し、シャトルバスを出したりしているが、それでもかなり混雑している。

宿泊施設はもちろんパンク状態で、通常時より倍の値段の宿泊費を設定するホテルも多数ある。駐車場だっていつもは荒れた空き地だったところをF1が始まる時期になると皆が線を引いたり、ロープを張ったりしてなんとなく駐車場にしたてる。プラカードに値段を書いてあるのを見たりするが、けっこう良い値段をつけてたりする。

毎年、あそこはいくらでやってただとか、あっちは穴場だとか話しながら

「みんな、なんだかんだ言って強気な商売だねー」

なんて笑いあうのも恒例だ。

F1慣れしている人は車に折り畳み自転車をのせてやってくる。サーキットから離れた場所に車を置いて自転車で移動するためだ。だけど、鈴鹿サーキット周辺はゆるやかな坂だらけなのでけっこうキツイのではなかろうかと思いながら、私は心の中で「がんばれー」と声をかけているのだ。

混雑している街を走るのは苛立つこともあるけれど、楽しんでいることもある。

楽しいこと、それはあまりみかけないナンバーの車にたくさん遭遇することだ。車好きな人が多いからなのか、かなり遠方の地域のナンバーをつけた車もやってくる。仙台、水戸、新潟、広島、愛媛、熊本……眺めていると、あらためていろんな所に人って住んでいるんだなと思えてくる。私が日常として過ごしている場所だって訪れた人にとっては非日常であり、当たり前の光景も当たり前ではない。人々と街が溶け合っているのを見ると、なんだか不思議な感じがしてきて、私はちょっとしたトリップ気分を味わうのだ。

人と人とが出会うこと、すれ違うことは風のように流れているんじゃないかと思う。

 

***

 吉川トリコ『名古屋16話』を読んだ。

名古屋16話 (一般書)

名古屋16話 (一般書)

 

 F1の時期でもないのに、なんで急にF1の話なの?と思われた方もいらっしゃるかもしれないが、それはこの本を読んだからである。

「名古屋16話」は名古屋にある16の区を舞台にしたショートストーリー集である。かあるい感じでさくさく読めるのが楽しかった。私は名古屋に詳しいわけではないけれど、いくつかの知っているお店や、名は出していなくともあそこだ!とわかるところがあってにやにやしながら読んだ。名古屋のことを全く知らない人が読んでも十分楽しめるが、名古屋を知り尽くしている人が読むとクスクス笑えるのは間違いないと思う。

この本、名古屋の話の他に「8の旅」と題し、近県を舞台にした物語も収められている。そのうちの1つ「リヨンの夜」が鈴鹿で行われるF1日本グランプリの話だった。ああ、わかるわーなんて思っていたら、F1のことが書きたくなったのだ。

 

いくつか挙げた地名で「熊本」と書いたけど、実は熊本ナンバーの車は鈴鹿ではあまり珍しくない。以前に「なんで?」と知り合いに尋ねたところ、ホンダの工場が熊本にあるので、鈴鹿工場と行き来している人がいるためだと説明された。逆に熊本には鈴鹿ナンバーの車が走っているのだろうかとそのとき考えた。

遠いようで近い。

日本は狭い島国なのだから、どこも遠くて近いのだ。

いつでも、どんな時でも、F1を観に来られた方が楽しんで帰れるように、私は自転車で坂を上っているあの人に向かって、心の中で「がんばれー」と声をかけているのだ。