雪が降った。
ここ数年、毎年雪が降っていたので、雪予報に驚きはしなかったが、降雪量が思った以上だったため、窓から外を見た瞬間、動きが止まってしまった。
昨日、雪が積もっている中、駅までの道を歩いた。舞台を観に行く予定があったからだ。玄関から出て、雪の中へ足を踏み入れると、足がズボッっと埋まって見えなくなった。ショートブーツの高さより積もった雪のおかげで、一歩進めるのに、いちいち足を高く上げねばならなかった。雪で歩きづらいことを予想し、電車の発車時刻に間に合うよう余裕をもって家を出たが、無情にも目の前で電車は駅のホームから離れていった。電車が3分から10分遅れているとサイトには書いてあったのに、よりによって定刻通り運行されていた。
まだ降り続く雪を頬に受け、やや泣きそうになった。ベンチは濡れていて座れなかったので、屋根のある階段で凍えながら30分以上次の電車が来るのを待っていた。
ふと、「音がない」と思った。静かだった。休日の朝は平日より車の音が少ないとはいえ、それ以上に静かだった。生活音さえもなく、私はこの場所に取り残されている感覚に陥った。心地よさと不安感が混ぜ合わさったような不思議な気分だった。
電車がやってきたとき、人の気配があることはなんて安心感を与えてくれるのだろうと思った。座席にすわり、外を眺めていた。幸いにも私が向かっている方角へ行くにつれ、雪は少なくなっていった。
駅に着き、ホームを速足で歩いた。
その先にはすでに到着していた友人がいた。
友人はにこやかな表情であたたかいお茶を私に差し出してくれたのだ。