「クリぼっちじゃなくて良かったね」
「ねー、本当に良かった」
紺と黒の色違いのリュックを背負った女子中学生と思われる二人が話をしながら私の前を歩いていた。クリスマスイブのショッピングセンターは人で溢れかえってきた。手をつないで歩く若者は見つめ合い、にこにこしている小さな女の子と手を繋いでいる母親はやや足早で、ケーキ引き換えの列にいる父親は大事な使命を全うするかのような表情でそこにいた。一人で歩いている人もいたけれど、皆華やかな空気に包まれて踊っているようであった。
高い声でセールの呼び込みをしている店員がいた。隣のお店でもセールをしているようで呼び込みをしていたが、高い声にすべてかき消されていた。
「ああいう高い声を出されちゃった時にはね……」
声を消された店員さんは先輩と思われる女性にアドバイスをされていた。
車を走らせていると消防車が数台追い越して行った。しばらくすると、大きな工場があると思われる付近から黒煙が上がっているのが見えてきた。黒い煙は空の高いところまでどこまでも昇っていくようであった。何もこんな華やかな日に…と黒煙を眺めていた多くの人が思ったであろう。
華やかな空気は幸せを大きくし、寂しさも大きくする。
温かさは時に残酷だと思う。
***
クリスマスの準備で忙しかった皆さん、お疲れ様でした。
「ありがとう」
「美味しかったよ」
優しき言葉で生きている時があります。
なので、私も感謝の気持ちを言葉で伝えていきたいと思っています。
とりあえず今日は娘に「洗濯物を取り込んでくれてありがとう」って言わなくちゃ。