辛いことや困ったことがあった時、「もしかして今不幸なのは自分だけでは……」などと、そんなことあるはずもないのに思い込んでしまうことがある。苦しい時に周りを見ろ!なんて言われてもなかなか見えてくるものではないと思う。
でも、ゆっくり周りを見渡してみると、みんなちょっぴり困っているのだ。
『おしっこちょっぴりもれたろう』を読んだ。
「何度でも口に出して言いたいタイトル」という賞があったら間違いなく、今年のベスト5に入るのではないか思える軽快なタイトル「おしっこちょっぴりもれたろう」。
タイトルと表紙のパンツにちょっぴりおしっこが染みちゃった「もれたろう」が可愛くて思わず手に取り読んでみた。
おしっこちょっぴりもれたろうはおしっこをする前かした後にいつもちょっぴりもれてしまう男の子で、いつもお母さんに怒られてしまう。
けど、もれたろうは前向きだ。
「でも、いいじゃないか。ちょっぴりなんだから。」
「ズボンをはいたらわかんないんだから。」
それにしばらくすると乾くことも知っている。
でも、お母さんにみつかると怒られるから、乾くまで冒険に出るんだ。
実は言わないだけで他にもちょっぴりもれて困っている人(仲間)がいるんじゃないだろうかともれたろうは思いながら町をずんずん進んで行く。
すると、もれたろうのように「ちょっぴりもれて困っている」ではないけれど、みんな「ちょっぴり」なにかしらの困りごとがあることにもれたろうは気づくのだ。
外から見ただけではわからないけれど、それぞれがその人にしかわからない困ったことを持っていると。
もれたろうはそれでも仲間がいないか探す。すると思いがけないところに「ちょっぴりもれたろう」がいたんだ……。
…おおっ!
ただ面白可笑しいだけの本だと思ったら、いろんな視点で物事を見ることの大事さに気づかされて驚いた。
息子にいたっては「もしや感動巨編じゃね?」という始末。(そこまでではないとは思う)けれど、ああ、いい絵本だなと素直に思えた。
すらすらと面白可笑しく読むのもいい。
いろんな人がいることに気づきながら読むのもいい。
読後が爽快で愉快になるのもいい。
そして、外してはならないのがラストページのお母さんの表情である。
世のお母様方だったらみんなあの表情をするのではないだろうか。
私もきっとしてしまう。あのなんとも言えない表情を……!
ちょっと疲れてたり、気分が落ち込んでいる人にもぜひ読んでもらいたい。
みんな「ちょっぴりもれたろう」だから。
明日も楽しく生きていきましょう。