朝、洗濯物を干すために窓を開けた。ひんやりとした空気が室内へ入り込んできたため、つっかけを履いて急いでベランダへ出て窓を閉めた。
バスケットに入った洗い立ての洗濯物を掴む。手が震えた。外気にさらされた洗濯物は洗濯機から取り出した後より冷たく感じた。指先から心臓へ向かってどんどん冷たくなっていくように思えて怖かった。
遠くで車が走っているのが見えた。「朝早くの出勤、ご苦労様です」と知らない誰かへ向かって呟いた。
慌ただしい日常がはじまる。すれ違うパトカーのパトランプはいつもより高速回転しているように感じる。寒そうに足早に歩く高校生。温かそうなコーヒー片手にコンビニから出てきたサラリーマン風の男性。すべての人がこの街を動かしている。そして私も。
首にぐるぐる巻きにしたマフラーに半分顔を埋め、空を仰ぐ。
いつか、空を飛んでやる。
頬に伝う涙を拭い、また今日を越えていく。