バンビのあくび

適度にテキトーに生きたいと思っている平民のブログです。

行き先のわからないもの〜 『という、はなし』を読んで

『という、はなし』を読んだ。

 

という、はなし

という、はなし

 

 

 24のお話で構成された短編集。

フジモトマサルさんのイラストが素敵だ。
通常、本は文章があり、それに見合ったイラストが入ると思っていたが、この本はフジモトさんのイラストからインスピレーションを受けた文章を吉田篤弘さんが書いたようです。
 
音楽でいうところの、曲と詞はどっちが先か?みたいなものでしょうかね。
とても面白いなぁと思いました。
 
イラストは全て動物が本を読んでいるところです。
表紙はイスに座ったクマが本を読んでいて、他には灯台の下でペンギン、縁側でネコ、ベッドでウサギ、キッチンでリス、シーソーでライオンなどなど。
 
「本を読んでいる動物」でお気づきかも知れませんが、私のアイコンも本を読むウサギだったりします。
読んでいる量としては本当にたいしたことないのですが、私は『本』というものが大好きです。
ですので、この本を読む動物達のイラストは可愛くてたまらんのです。
ずっと眺めていられそう。というか是非見て頂けたら嬉しい。
 
『何ひとつ変わらない空』や『日曜日の終わりに』、『暗転』などがゆるっと楽しめました。
 
 
『話の行き先』という話で、タクシーの運転手が「私は本が苦手なんですよ。特に小説が」と言う。
なぜかと問うと、運転手はこう答える。
 
運転手の癖なんですよ。職業病というやつです。われわれの仕事は「行き先」がわからないと何も始まりませんから。
 
小説=行き先の分からないもの。
結末がどこに辿り着くかわからないから小説は楽しいのか!なるほどと思った。
行き先に辿り着くまでの過程も車窓から眺める景色のように楽しめれば、さらにより良い旅になりそうだ。そしてそれを期待して、また次の本に手が伸びる。
 
『読者への回復』という話にこんな文がある。
 
言葉が、かさかさになり、うるおいも深みも哲学も詩も消え失せる。
そもそも、言葉が出てこない。
(中略)
原因はあきらかだ。
ふだんは、世の「活字離れ」を嘆いているくせに、嘆いた自分にあぐらをかき、ついうっかり、映画と音楽とインターネットに山ほど時間を捧げている。
 
うむむ。なんも言えねぇ!と思ってしまった。
 
家、書店、図書館、どんな場面でも本棚の前で背表紙を追っている最中に
新しい出会いと共に昔読んだ本と再会し、記憶を辿る時がある。
再度、読んだ時にまた違った感想を抱き、自分の変化に驚きつつもどこか嬉しいようなくすぐったいような、そんな感覚になるのが楽しい。
 
そんな楽しみと感情があるからこそ私は『本』から離れられないのである。
 
 
また別の意味で、私のブログは『行き先のわからないもの』でありたいなぁと思った。
だって、いつも着地点がみつからないんですもの☆