バンビのあくび

適度にテキトーに生きたいと思っている平民のブログです。

「ここではないどこかへ」

教室で皆の輪に入るでもなく、ポツンと席に座り、本を読んでいるような人に話しかけるのが好きだった。

おそらく、輪に入らず自分の世界を見つづけている人が何に興味を持っているかが気になって仕方がなかったんだと思う。

高校の時に気が付くといつも本を読んでいる女の子がいた。

何をあんなに夢中に読んでいるんだろう?と気になって、話しかけたら私の知らない事をいっぱい知っていて「おおっ!」といちいち感動した。

周りのウワサでは彼女の家は塾をやっていて、そこでバイトをしている塾講師と付き合っているとかで純真無垢な女子高生の中ではちょっとだけ微妙な位置にいたのかも知れない。私は別にそんなのどうでも良くて、話が面白ければそれだけで良かった。その彼だかの話も一切したことがなかったし、この本読んだら良いよーと薦めてくれるのも嬉しかった。

高校の図書室にはリクエストカードがあるのだが、それを利用する人が少ないらしく「リクエストカードに書いたら、だいたい入れてもらえるよ」と教えてくれたのも彼女だった。

 

それなら・・と当時の雑誌(たぶんOliveだと思う)の本紹介にあったモナ・シンプソンの「ここではないどこかへ Anywhere but here」をリクエストカードに書いてみた。すると2週間後ぐらいに「リクエストの本、入れましたよ」と司書さんから連絡がきた。うわっ、本当に入れてくれるんだと彼女に感謝した。

 

この本、自由な母親とそれに振り回される娘の話だとは覚えているのだが、内容をあまり覚えていない。有名な作家という訳でもなく(もしかしたら私が知らないだけで有名だったのかも?)、私の希望で図書室へ入れてもらったので以後借りる人はいなかったんじゃないかと思う。

それぐらいの記憶しかない本だったのだが、後にこのモナ・シンプソンスティーブ・ジョブズ実妹だと知った。スティーブ・ジョブズが亡くなった時の追悼演説の名前を見て思い出したのだ。どうやら私が読んだ「ここではないどこかへ」は母親をモデルにして書いた本だったらしい。そう考えるとだいぶ自由な方だったのかな?とか思うが、なにせ内容をちゃんと覚えていないため、もう一度読みたいなぁといつもどこかで思っている。

 

私は単行本で読んだのだが、後に映画化され、映画化を機に文庫化されていたみたい。

 

 スーザン・サランドンナタリー・ポートマンだと知り、こちらも観たくなった。

 

ここではないどこかへ〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)

ここではないどこかへ〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)

 

 

オマケで追悼演説も。

Long Tail World: スティーブ・ジョブズの妹モナ・シンプソンの追悼演説:A Sister’s Eulogy for Steve Jobs

 

 

 当時の私がなぜこの本を読みたいと思ったかと言えば明らかにタイトルに惹かれたからだった。

 

「ここではないどこかへ」

 

平凡な日常を過ごすことは幸せであると頭ではわかっていても、心の何処かで「ここではないどこかへ行きたい」と思っていたりする。

別に体が何処かへ行かなくても心だけでも何処かへ行きたい。

 

 

ラブレターの日にラブレターだと勝手に思えちゃう文章を読んで、とても幸せになった。

心だけふわりふわりとどこかの国へ旅に出た気分だった。

 

 

***

 

今でも1人ポツンとしている人を見ると話しかけたくなってしまう。

だが、中学生の時に1人で本を読んでいたAくんに話しかけていたら好意をもたれてしまい、手紙やら自分の好きな曲が入れられたテープなんかを渡されてしまったことがあった。

ああ、なるほど。

こういうことになっちゃうこともあるのね・・とそこで学んだので、話しかけたくてもググッと半分ぐらいは我慢して過ごしている。

 

でもさ、別に我慢する必要もないかもなぁ!と今日はなんだか思ったんだ。そんな日。