バンビのあくび

適度にテキトーに生きたいと思っている平民のブログです。

絵本『チェロの木』を読んで〜ヤイリギターを思い出す

『チェロの木』を読みました。

 

チェロの木

チェロの木

 

 

森の木を育てていた祖父、楽器職人の父、そして音楽にめざめる私。

つながりはとても温かく優しい空気なのです。

この絵本に出てくる私は祖父と森を歩くのが好きでした。

その祖父にこんなことを教えてもらうのです。
 
「ヤマバトの子どもが鳴いているね。ぼそぼそとまだたよりない声だけど、鳥はああやって、さえずる練習をするんだよ。ぐぜりっていうんだ」
 
子どもの時にこんな風に教えてもらったことって大人になってもずっと覚えているような気がします。
「ぐぜり」という言葉を知らなかったのですが「口舌り」と書くのですね。言葉からなんとなく舌がうまく回り切らない感じ?子どもが「とうもろこし」を「とんもころし」と言うようなイメージが湧きました。
 
この絵本の私の父はバイオリンやチェロを作る仕事をしていました。
ある日、楽器職人の父と一緒にチェリストであるパブロさんへチェロを届けにいきます。
パブロさんは父の作ったチェロをとても気に入り、演奏会へ招待してくれます。
 
そこで、私はその音に魅せられるのです。
そのことを誰にも告げていませんでしたが、父は気づいていました。
こっそりと私のために小さなチェロを作ってくれていました。
 
私は初めてチェロを弾きました。
私は大人になった今も弾いています。
なぜなら私は今、子ども達にチェロを教えているのです…。
 
山の中の情景、初めてチェロを手にした時の感動など表現がとにかく美しいです。
絵も豊かで静かな時を感じさせてくれます。
 
私の説明ではおそらく伝えきれないので、ぜひ読んでみて下さいね☆
 
 
***
 
この絵本の中で父親はチェロを作っているのですが、
「つるまきの曲線は白鳥のように美しかった」
「トウヒやカエデの木目が、ニスのまくをすかして、うかびあがってくる。」
のような文章が出てきます。
 
これを読んで、数年前にヤイリギターの工場見学へ行った時の事を思い出しました。
 
私が勤めている会社はものづくりをしている会社なんですが、ある日、「分野は違うけど、ものづくりをしている会社を見に行こう!」ってことになりましてYairi Guitar/ヤイリギターへ行きました。
 
一般の方でも予約すれば見学出来ます。ギターに詳しい方はそういったことを伝えておけば、そのような説明をしてくれるようです。
私は音楽を聴くのは好きですが、ギターは弾けませんのでごく初歩的な作業の説明をして頂きました。
それぞれのパーツや工程ごとに職人さんがいて、丁寧に作業されていました。
少し年齢の高い方だなぁと思える職人さんの横にはたいてい若い方がいらっしゃいました。
当たり前ですけど、ああ…こうやって若い世代へ受け継いでいくんだろうなと思いました。
 
そんな見学の中で私が1番興味を持ったのは木がストックされている部屋でした。
木の良い香りで溢れているその部屋で、何年も木を寝かせるんだそうです。
そしてその木に音楽を聴かせていました。
そうすることで、木が音の振動に慣れるらしいです。
本当に素晴らしい空間でしばらくその部屋に居たいと思いました。
 
見学を終えると、ヤイリギターがたくさん置いてある部屋があり、そこで弾いてみることができました。
私は弾けないのでポロンと音を鳴らしてみただけですけどね。残念。
 
その後、せっかくなので皆で写真を撮りましょうってことになり、当時の社長である矢入一男さんにも入ってもらい写真を撮りました。
社長は「僕は女性の隣がいいんだよ」と言いながら、私の隣に来られました。気さくで楽しい方だなという印象でした。帰り際にみんなにピックを手渡しで下さいました。
 
そのピック、しばらく手元にあったのですが、どうせなら弾ける人にあげようと友達に渡しました。
その2ヶ月後に震災がありました。部屋がぐちゃぐちゃになった中でも、友達のギターは無事でしたので、もしかしたら矢入社長が守ってくれたのかも知れないですね。。
 
矢入一男社長が3月に亡くなられて本当に残念です。
生前にお会いすることが出来た私は幸せだなと思います。
 
 
矢入社長の思いが、絵本「チェロの木」のようにずっとつながっていくだろう事を願っております。