
こちらの本に載っている『こぐまビル』を読みました。
もう、ご存じだと思いますが、はてなでブログをやっていらっしゃる寺地はるなさんの小説です。
私は『背中に乗りな』も読んだのではるなさんの小説を読むのは2回目です。
『背中に乗りな』は日常のお話で、おそらく上手く文章が書けない私が同じように書くと退屈でしかない感じになると思うのですが、はるなさんが書くと所々ユーモアがあり、とても楽しかったです。
動きは緩やかだけれども何かは残る。そんなお話でした。
今回の『こぐまビル』も全体的に緩やかな温かい空気に包まれている小説だと思います。
ここから先は内容にも触れますので、まだ読まれていない方はお気をつけて。
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主人公、恵はバツイチの三十路女性。
恵が自分がどうあるべきか?別れた夫に言われた「優しくない」はどういう意味だったのか?迷いながら日々過ごしていく。
恵は従兄弟で引きこもり(しかも喋らない)の幸彦や法螺話ばかりする大らかな祖父の住むこぐまビルの管理をすることになる。こぐまビルのテナントで刺繍屋をしているトビーさんに恋をしたり、骨董屋のゆり子さんと親しくなったり、税理士の本多さんがいたり。
登場人物はみんなどこか可笑しく、嫌味がない。実在するのであれば、どの人も「面白いなぁ」と思いながら尾行し、観察したいぐらいである。(あ、それではストーカーになっちゃうか!)
個人的にトビーさんはけっこう好きな部類の人なのだが、もう少し変わった人だと更に私好みだった。
そうそう、後半にキノコさんって人が出てくるのでテンションが上がった。キノコ好きだから致し方ない。
この話には生や死について考える場面がいくつかある。少し前、はてな界隈でそういった話題もあったせいかいつもより少し考えながら読んだ。
そんな部分もはるなさんの文章はそこまで重くなく軽やかなので後味は苦くない。
この小説の中でこんな一文がある。
どれぐらいの苦労をすれば夫の言う「つらい体験をした人だけが持つやさしさ」を会得出来るんだろうか。
この部分を読んだ時、先日自分が書いたこちらの記事を思い出した。
結局、私が思ったことはそう言うことなのだろう。同じ体験をした人にしかわからないと言われればそれまで。ゲームセット。本当にぐうの音も出ない。
だが、それでも何かを伝えたいと人は思ったりするのだ。
この小説は人との繋がりの中で模索し、何かを得ようと口をパクパクさせて過ごしていく人達の話なんじゃないかと思う。
こぐまビルは非現実的だけどおそらくその辺に転がってるんだ。石ころのように。
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さてさて。
上の画像で付箋が貼ってあるのが見えると思うのですが、「そこまで読み込んだのか!」ってことではなく、面白い表現に付箋をつけていたらあんなことになってしまいました。。
実は読み始めて数ページ後にでてくる「ぎょむぎょむ」という擬音がツボに入りまして、フライングではるなさんに「ぎょむぎょむってなんやねん!面白い!」と勢いで言ってしまいました。
ここで書くべき感想を先に作者に言ってしまうなんて・・!
でもそれぐらい「ぎょむぎょむ」は私の心を鷲掴みにしました。
ちなみにここで言う「ぎょむぎょむ」はスーツケースに服を押し込む際の擬音です。
私は最初、川原泉の「むぎゅむぎゅ」が浮かんでしまい、それを伝えたところはるな先生(あえての先生)はこうおっしゃられました。
「最初『ぎゅんぎゅん』だったんですけど、町田康の真似みたいになるからやめました」
・・なるほど!そこを避けての「ぎょむぎょむ」なのですね。
そこからは常に私の頭の中をぎょむぎょむが追いかけてきたり、ケンカをしかけてきたり、寝ても覚めても頭の中がぎょむってました。今もちょっぴりぎょむってます。
ついでに私が思わず付箋つけちゃった部分をご紹介致します。
トビーさんが歌っている歌が「ぬけがらサンシャイン」に聞こえた。
なに?ぬけがらサンシャインってなに?
祖父との会話で祖父はカフェをカフェーと発音する。女給が出てきそうだ。
「恵の美貌に憧れとるんじゃないかね」
「やめてよ。全日本美貌協会から苦情が来るから」
全日本◯◯協会とか××選手権ははるなさんっぽい!
事実関係を怠った自分の粗忽さがひたすらに恥ずかしい。廊下をのたうちまわりたいほど恥ずかしい。いますぐ能登半島に旅立ちたいほど恥ずかしい。
よし、行きましょう。能登半島へ!
わたしのことを「夢の中でおならを踏んづけたような頼りない状態の人」と呼ぶ。
う、ん。私の想像力を駆使してもなかなか思い浮かばぬ状態だ。なのに何となくわかる。
ってな具合に、小説そのものでも楽しめるし、はるなさんのブログを読んでいる方でしたらこんな楽しみ方も出来ちゃいますよ!
ただし、いちいちツッコんでいると本筋を忘れるので注意が必要です。
さあ、読んで見て下さいな。
1080円ですからね☆(手をコネコネしながら)
※そんな訳で、はるなさんが文章を書く限り私の「どくしょかんそうぶん」も続くのであった…。