「試合の流れを変えてくれないか?」
最終セットで7点差をつけられて劣勢の状態という大事な場面で、自分が呼ばれるとも思っておらず、ド緊張でロボットみたいなカクカク動きの私。*1
「ワタシハ ナニヲ シタラ ヨイノデスカ?」
とO先生に尋ねる。カタカナな台詞は中学の時、いきなり部長を任命されて以来だ。
「いいか、よく聞け。まずはブロックを決めろ。その後はいつものようにやればいい。たぶん、向こうはお前がサウスポーだと知らないと思う」
ん!そうか。サウスポーだとスパイクのコースが違うからいけるんじゃないかってことね。ふむふむ。
そう思いながら心臓がドキドキの中、出来るだけ平静を装いコートに入る。まずは声だけでも出して周りを盛り上げよう・・ではなく自分を落ち着かせよう!と声を出してみる。
よし。とりあえずブロック。キッと相手コートを眺め、アタッカーに目をやる。ベンチから見ていたので、なんとなく得意なコースも把握していたし、何より交代したばかりの私の方が体力がある。元気だ。
「大丈夫」自分にそう言い聞かせた。
Y高校のセッターがトスをあげ、アタッカーが踏み切って飛び上がる。「ここだ!」と思ったコースでブロックをすると、私の手にボールが当たり相手コートに落ちた。
・・ホッとした。とりあえずホッとした。自分が任された仕事の第一段階をクリアしたと思った。
まだ1点。劣勢の状態は依然変わってはいない。
次の攻撃はどうするのかとセッターのF先輩を見ると出していたサインは速攻だった。必ず次は自分に上がってくると思った。私はCクイックが得意だったのだ。
ずっと自分はエースポジションの選手ではないと思っていた私が、やっとライトポジションになれたので、「これが出来なければ始まらない」とばかりにタイミングが上手く取れていなかったクイックを散々練習していたのである。
合宿の時も他の人にトスが上がる度、自分も合わせて跳んでみる。ずっとずっとF先輩のトスに合うように練習していた。
「大丈夫」再度、自分に言い聞かせる。
レシーブで上がったボールがF先輩の手に触れる。今だ!と思い、踏み切ってスパイクを打つ。
交代したばかりで元気が有り余っていた私は、自分でもビックリするほど鋭角なスパイクを打っていた。一瞬、景色が止まって見え、その後みんなが喜んでくれているのが見えて「あ、決まったんだ」と思った。
それが決まったことで、だいぶ緊張も解けた。上がってくるトスに対し、ストレートに打ってもクロスに打っても、フェイントをしても面白いくらいにボールが落ちてくれた。
やはりY高校は私がサウスポーだと知らず、私のスパイクコースについてこられないんだろうなと思った。相手が慣れるまでが勝負。*2
だけど慣れさせないぞ!と出来るだけコースを打ち分ける。Y高校のレフトの子はやや内側でブロックを跳ぶため、ストレートコースが開いており、そこを狙って打つ。
それが決まると今度は気にしてストレートコース寄りにくるので、鋭角(アタックライン付近)なスパイクをクロスに打つ。
1点、もう1点。
少しずつ積み重ねた点数はいつの間にか同点となり、追い越し、こちらのマッチポイントとなった。
最後、エースであったチーが決めてくれ、私達の高校はY高校に勝利したのである。
2年生の先輩達がこちらへ来て、泣きながら頭をなでられたり叩かれたりした覚えはあるのだが、私はへなへなと力が抜けた状態になっており嬉しさはすぐにはやってこなかった。
「あ・・勝った」
棒読みの言葉を発することしか出来なかった。
その後、タロー先輩が「ありがとう。良くやったね!」と言ってくれたのは鮮明に覚えてる。そこだけは嬉しかった♡(そこだけ?w)
後に、O先生から「あそこでお前なら何とかするんじゃねぇかと思ってた。それでどうにもならなかったら負けるだけだ」と言われた。
今、考えると後にも先にも私が一番活躍したのはこの試合だったと思う。
レギュラーとして出場しなくても自分の役割を全う出来れば、それは強さに変わるのだと思った。
さて。そんな感じに地区予選を突破し、いよいよ県大会。
なのに、ここでタロー先輩の怪我が発覚し、私がレギュラーとして県大会へ出ることに・・!?
次回。バレーボールをしていました〜高校編~その3。お楽しみに~♪
県大会まで地獄の日々・・・。
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