バンビのあくび

適度にテキトーに生きたいと思っている平民のブログです。

『サマーサイダー』を読んで。思い出した大群の話。

f:id:bambi_eco1020:20140831221952j:plain
 
昨日、書いた夏のぬけがら - バンビのあくびでも、わかったかも知れませんが『サマーサイダー』を読みました。市川春子さんが描く表紙が素敵です。
 
幼馴染みの倉田ミズ、三浦誉、恵悠は廃校になった中学の最後の卒業生。揺らぐ三角関係の中心には、去年の夏休みに変死体で発見された担任教師をめぐる秘密があった。
夏が再び訪れ、廃校舎に隠した罪の記憶が三人を追いつめてゆく。
ほの暗い恐怖を漂わせながら、少年少女の切ない関係を瑞々しく描く傑作青春小説。
 
三角関係の青春モノかと思いきや、ホラー要素も少し含んだ奇妙で不思議な話でした。
これを読んだ女性の多くが「三浦みたいな人、好きだわー」って言ってそうな気がしました。私も三浦みたいな人は好きです。うへへ。
 
この本を読むと「蝉」を見た時に色々思い浮かべてしまいます。
それほど「蝉」が色濃く心に残ってしまう本。
面白いのでぜひ、読んで見て下さい。
 
 
そして、こちらの本を読んで思い出した話があるのです…。
 
***
 
私が通っていた小学校は校庭を囲むように何十本もの桜の木が植えられていた。
春。入学の季節の頃、それらが華やかに咲き乱れる。
小学生の私は、桜のアーチをくぐることにどこか気恥ずかしさも感じていたが、本当はとても嬉しくてウキウキしていた。
その桜にはそれほど心を高揚させる美しさがあった。
 
校歌の歌詞に「桜の花は窓近く」とあったが、誰もがその言葉に頷いていたのを覚えている。
 
小学校の横にはわりと大きな公園があり、そこもグラウンドを囲むように桜が咲いていたため、皆どこかお祭りムードであった。
そして、そんな学校へ通えていることはち私のちょっとした自慢であった。
 
 
だが、何十本もの桜の木が私達にもたらしたのは、喜びだけではなかった。
 
夏が近づいてきたある日。
2限と3限の間にある長い休み時間に、いつものように外で友達と遊んでいた。
校庭の隅にある丸太で作られた平均台の上を左右から進み、ジャンケンして負けたら戻る…と繰り返す陣地取りのようなことをしていた。
左右から勢いよく進んで行き、
 
「じゃんけんぽん!」
 
視線がお互いの手に集中した時、私も友達も「うわっ!」と声をあげた。
視界の中に平均台の上を這う白い毛を生やした毛虫が入ってきたのである。
 
「毛虫、いやぁ!」
 
友達がダッシュでその場から離れた。私も友達の後を追うようにそこから離れ、校舎へ向かった。
 
走っている時に地面を見ると、毛虫は平均台の上にいた1匹だけではないと気づいた。
2匹、3匹…走っている私に見えるだけでも10匹ぐらいるのがわかった。
 
校庭でドッヂボールをしていた男子が「おぉ、毛虫がすげぇ!」と言っているのが聞こえた。
 
 
昼休み。
昇降口から外へ出て、チラッと校庭を眺めると、数え切れないほどの毛虫がいた。
それは桜の木にたかるアメリカシロヒトリだった。
私が通っていた小学校の子でアメリカシロヒトリを知らない子はいないんじゃないかと思う。
 
華やかな春を感じた後、毎年夏が近づくにつれ、目にする悪夢。
校庭で遊べないほどの数で襲ってくるアメリカシロヒトリの大群。
 
先生が薬がついているであろう布を巻きつけた木の棒で駆除するも、それらには到底敵わぬのだ…。
 
 
***
 
「サマーサイダー」の中で、無数の蝉の群れが出てくる箇所があるのですが、それを読んだ時に真っ先にアメリカシロヒトリの大群が浮かんでしまいました。
寒気と全身の毛が逆立つような気味の悪さが、私の中で一致したのです。
 
虫でも動物でも人でも、個体ではさほどでもないのに、群れをなしたとたん、とても恐怖に感じる時があります。
その感覚を思い出し、ぶるっと震え、誰もいないのに後ろを振り返ることまでしてしまいました。
けっこう気が小さいですね、私…。
 
 
まだまだ残暑が続きそうですので、少し涼しい気分にしてもらえて良かった!と思いましょう。
そうしましょう。。ぶるっ!
 

 

 

 

サマーサイダー (文春文庫)

サマーサイダー (文春文庫)

  

 

虫と歌 市川春子作品集 (アフタヌーンKC)

虫と歌 市川春子作品集 (アフタヌーンKC)