バンビのあくび

適度にテキトーに生きたいと思っている平民のブログです。

卒業式でした

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昨日は卒業式でした。
 
***
 
 

窓を開けると前日降っていた雨が上がっていた。穏やかな朝だ。

 
子ども達を起こし、朝食をすませてからスーツに着替えた。息子は着慣れないシャツの一番上のボタンが留まらず悪戦苦闘。ズボンをはいたら、今度はベルトと戯れていた。着替えだけで一大イベントだ。
ヒール靴を履き、息子と一緒に家を出た。小学校までほんの300mほどの道を歩く。入学した時から何度歩いた道だろうか。それも今日で最後だ。ヒールがアスファルトを蹴るコツンコツンという音がカウントダウンのように響いていた。
 
学校へ到着し、校舎1階で受付をすませる。
着慣れないスーツで身を固くしている子、袴姿が眩しい女の子、芸能人のように髪の毛をバリッと固めたイケメンの男の子…こんなたくさん子がいたのだなぁと今更ながらに思った。
私は保護者控え室となっている教室へ移動した。教室へ足を踏み入れると、規則正しく並んだ机の上に、子どもから親へ宛てた手紙と写真の入った手作りフォトフレームが置いてあった。フォトフレームは家庭科の授業で製作したのであろう。糸が頼りなくふらふらと歪んでいたけれど、私と息子と娘は写真の中で微笑んでいた。
しばらくしてから担任の林先生が袴姿で現れ、私は体育館へ向かった。
体育館の中は中央に演台があり、在校生の席と卒業生の席が向かい合うように設けられていた。ステージは幕が閉められ、その前にスライドを映すためのスクリーンが設置してあった。卒業生の席の両脇に保護者席があったため、私はそこに腰掛けた。
カメラやスマホを手にし気持ちのはやる保護者の方を眺めた後、ふぅと息を吐きながら天井を見上げた。
ざわめきもスクリーンにスライドが映されると次第になくなっていった。スライドは卒業生が過ごした6年間をゆっくりと映し出していく。1年生の頃のあどけない表情、遠足での楽しそうな風景、運動会での真剣な眼差し…。親として子の成長を実感する瞬間は胸にこみ上げるものがあった。
スライドが終わるとそれらは素早く片付けられた。
次の瞬間、幕が上がり、ステージいっぱいに並んだ卒業生が姿を現した。各クラス1人ずつ入場し、座席に着いていく。息子は体が小さいため最初は姿が見えなかったのだが、終盤になりやや猫背で緊張した面持ちで姿を現した。
全員が席に着いた後、開式ことば、国歌斉唱、校歌斉唱と滞りなく進んでいく。
いよいよ卒業証書授与だ。1人ずつ演台の手前に立ち、将来の夢を述べてから校長より卒業証書を受け取る。サッカー選手になりたい、看護師になりたい、パイロット、ゲームクリエイター、保育士…夢は大きく広がっていく。
次に校長からの「はなむけのことば」があった。校長はそこでアルソミトラの種を手に話し始めた。アルソミトラは熱帯アジアに生息する植物で、高い木の上にヘルメットぐらいのサイズの実をつける。その中にたくさんの種が入っているのだが、その種は周りにブーメラン形の薄い翼のようなものがついており、それにより、風がなくても遠くへ飛べる。体育館のギャラリーから先生がアルソミトラの種を飛ばした。タンポポの綿毛のようにふわりふわりではなく、揺らめいて、それでも紙飛行機のようにすいーっと飛んでいく。不思議な動きだった。
風はなくとも遠くへ飛んでいく。追い風がなくとも自分の工夫次第で広がっていける。
未来は明るいのだと言うことを伝えたいのだと思った。
その後も式は何事もなく進んでいき、お別れのことばになった。卒業生が呼びかけをする声を聞いた。声変わりをしている男の子の声にこれから訪れる「思春期」を感じてしまった。息子の声はしっかりとした音で体育館に響いていた。
合唱曲「COSMOS」と「最後のチャイム」。式の終盤であり、一番の盛り上がりどころであろう合唱の時に卒業生の多くが笑顔であったため、こちらも顔がほころんだ。中には涙が溢れている女の子も見受けられたが、その子の方を向き微笑む隣の席の男の子がいた。この小学校を卒業する子達は、何かしらの理由がない限り全員同じ中学校へ進学する。小学校や先生方へお別れする寂しさよりも、これからやってくる未来への期待が上回っていたのかも知れない。まっすぐ前を向き、笑顔で合唱する卒業式は私にとって初めての体験だった。
閉会のことばを終え、卒業生は退場して行った。
 
保護者は校舎外で子ども達が出てくるのを待った。
出てきた子どもと並び、在校生がアーチを作ってくれている校庭を歩いた。今までお世話になった先生方が息子へ声をかけてくれた。
アーチをくぐり終えると、子ども達は皆で写真を撮り合った。私は息子からカナちゃんが引っ越しをすると聞いていたので、カナちゃんと写真を撮るように勧めた。今は違うクラスだけれど、仲良くしてくれたカナちゃんを含む何人かで写真を撮った。
今まで担任をしてくれた先生方とも写真を撮った。
私が今までに先生方から息子へ頂いた言葉で一番多かったのは「芯が強い」だった。
自分をしっかりと持っている。真っ直ぐな目をしている。
この日もそう言われ「時にはね、逃げても良いって言ってるんですけどね」と先生へ話した。先生も同意見だったようで「逃げるのも良いよ」と2人で息子へ呼びかけてみるも、当の本人は遠くを見て笑っているだけだった。
 
 
 
***
 
帰ってから、息子の手紙を読んだ。
 
「僕より大変なのはお母さんだと思います。これからも色んなことがあると思いますが、その時はよろしくお願いします」
 
嬉しさと「僕より大変」と言わせてしまっている心苦しさがぐるぐると渦を巻いた。
自分の子がヒトとして感情を持ち、感性を磨いてこれから進んでいくであろうことに、感動よりも不思議なモノを眺めているように思えた。
この子は私の分身ではない。「個」であることをより深く感じたからかも知れない。
 
 
「私からの手紙、読んだ?」息子へ尋ねた。
「うん」
 
「結局さ、私達って同じようなこと言ってるよね」
 
あはは。うふふ。
 
卒業は成長していく上での通過点に過ぎない。
また一歩ずつ踏みしめてひたすら進んで行くしかないのだ。
 
 
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