バンビのあくび

適度にテキトーに生きたいと思っている平民のブログです。

夏祭りのあと暗闇の中を歩くのが好きだ

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夏祭りへ行った。

お寺の境内で行われる夏祭りは、地区の方々の有志により成り立っている、地域に密着したお祭りだ。

私は今回、ご高齢の方から注文を取り、屋台へ買いに行くウェイトレスをやった。畳敷きの建物内に折りたたみ机と低い椅子が並んでおり、高齢の方はこちらに座り談笑しながらお祭りを楽しむのだ。畳の上には高齢者だけでなく、赤ちゃんを連れた方、ちょっと座りたい小学生、色んな人がいらっしゃった。市内には歩行者天国になるようなお祭りもあるのだが、高齢の方の中には歩くのが辛い方もいらっしゃるので、このお祭りを楽しみにされているようであった。

注文を取り、屋台へ向かう。大きなお盆の上はすぐに食べ物でいっぱいになった。何度か往復し、やっと注文の品をすべて届けた。何往復かしただけなのに、私の額から汗がポタポタと流れ落ちた。首にかけていた金魚柄のタオルで汗を拭い、また注文を取りに行った。

注文がひと段落したところで、喉が渇いたのため、隣にあったジュース売り場でコーラをもらった。(このお祭りは祭りのスタッフであれば飲み食いすべて無料なのだ)プルタブをあけ、ゴクゴクと音を立てながらコーラを飲んだ。炭酸の泡が喉に刺激を与えながら私の体の中へ入っていった。喉を潤すと、なんだかお腹が空いていた。やきとりを頂こうかと思ったのだが、炭火で焼いてるためか混雑していたので、たませんをもらいに行った。たませんは大きなえびせんべいの上に卵焼きをのせ、天かすや青のり、削り節などをトッピングしたものだ。えびせんべいをパリンパリンと食べ進め、玉子とソース部分に突入。ソースと玉子とえびせんべいの相まった、ちょっとチープな感じがとても美味しかった。

「それ、おいしいの?」

ジュース売り場にいたサトミさんが笑顔で聞いてきた。

「美味しいよ!あ、ん、美味しいからさぁ、サトミさん、私にビールちょうだい!」

ソースの味が濃いめだからビールが欲しくなってさぁ…そんな私の言い訳を笑いながら、サトミさんの旦那さんがビールサーバーからビールを紙コップに入れてくれた。

「はい、ビール!それから、これね」

サトミさんの旦那さんはビールと一緒にマッキーペンを私に手渡した。「だって、まだ飲むでしょ。だからコップに名前書いてねー」笑顔でそんなことを言われてしまっては書かないわけにはいかん!と思い、私はコップにでかでかと名前を書いた。

娘や息子は首から事前に購入したチケットを下げ、楽しんでいた。息子があまりにもきょろきょろしているので、どうしたのか尋ねると、「カキ氷屋さんにお客さんを1人連れて行けば、タダでカキ氷くれるって言われたんだよー」とニヤニヤしながら言った。カキ氷は氷の塊を削って作るので、早くさばかないと氷が溶けてしまうため、息子にそのようなことを冗談半分で言ったようだった。結局、息子は任務を遂行し、タダでカキ氷を食べていた。なかなかできるヤツかも知れない。

その後はウェイトレスをしながら、途中であげたこを頬張り、ビールを飲み、またウェイトレスをして、枝豆を食べながらビールを飲んだ。ゆるさ抜群のお祭りである。

次第に陽が落ち、暗くなってきた。屋台もそろそろ終わろうとする頃、恒例のビンゴ大会が始まった。こども用と大人用に分けた景品が用意されたビンゴ大会は、ビンゴをしている間に屋台を撤収するのが目的だったりする。こども達はそんなこと関係ないので、「早く次の番号言ってよー」と司会を焦らせるが、毎年司会をしているタカさんは慣れたもので、ちょいちょい寒いギャグを入れながら時間を引き延ばす。タカさんはビンゴになった方に景品を渡す際、「お、おじさんビンゴですね。家を建て替えられたばかりだから、これ使えるかも知れないですよ」など一言付け加えたりする。場合によっては余計なお世話になりかねないことも、祭りの雰囲気とビンゴのざわめきの中でかき消されて、帳消しになっていた。私はこの時にタカさんが発する言葉を聞くのがけっこう好きで、そこから近所の事情を知ったりする。今回も近くに住んでいる方が妊娠中だと言うことを知った。3人目かー。賑やかになりそうだなって思ったんだ。

「こども達の景品、俺が名古屋まで買いに行ったんだけどさ、問屋だから安いのよ」

私の隣で飾りを片付けていたおじさんが言った。このおじさんはやきとりを焼いていた方で毎年、助かっている。適当な相槌を打ちながら、ありがとうございますと伝えた。

ビンゴが終わると、最後は花火が上がる。

大きな花火大会のような花火ではなく、一般家庭であげられるような音ばかりがうるさい打ち上げ花火である。ドラゴンから始まり、次第に打ち上げ花火になるのだが、娘は音が怖いようで耳を塞ぎながら空を眺めていた。

大きな夜空にあがる花火は大きくはなかったけれど、清々しい気持ちにはさせてくれた。

花火を見終えて帰路につく。

華やかな出来事の後、暗い道をゆっくりとこどもと一緒に歩いていく。

私はこの時間がとてつもなく好きだ。先ほどまでの出来事がまるで夢だったのではないか。今は夢から覚める時間ではないだろうか。余韻とともにやってくる切なさがなんだかあたたかく感じるのだ。

闇の中で発する言葉は昼間よりも鮮明で、すべてが大事な言葉のように思えてくる。おそらく一時の魔法にかかっているのだろう。

あと数十メートル歩けば家につく。汗でベタベタの体に頭からシャワーをかけたい欲求がぐんぐん膨らんできたのだが、魔法がとけるのは少々寂しいと思った。

 

夏は暑いから、明るいから、小さな切なさが毎年私の中に積み重ねられていく。

冬のそれとはまた別のモノなのだ。

 

 

 

 

 

※たませんはこんなやつですー。

たません