3月某日。
松阪市内で信号待ちをしている際に目に入った看板。
家は足を骨折しているらしい。良く見ると、左手にも包帯を巻いているので、重傷のようだ。いったい、家が何をしてこんな怪我を負ったというのだろうか。台風にやられたのだろうか。三重のお年寄りは伊勢湾台風の被害を覚えており、台風情報が出ると、早々に対策を始めるのだが、この家は予想を遥かに超える嵐がやってきて被害を負ったのではないかと私は想像した。
これについては看板設置者に尋ねてみたいものである。
家の屋根の素材は瓦だろうか。切妻屋根でないことは見てわかるので、この家は片流れ屋根というやつなのかも知れない。片流れ屋根は太陽光発電パネルを多く乗せられるとのことで近年、やや増えているらしいが、看板の色褪せ具合から察するに、太陽光発電パネル設置は関係なさそうだ。そんなのが流行る前からきっとここに設置されていたんだろうから。
この看板、医師がめちゃくちゃ笑顔なのも気になる。負傷した家が困り顔であるにも関わらず、医師は足を組んでめちゃくちゃ笑顔なのだ。私は足を組んで診察する医師に出会ったことがないが、あまり態度が良いとは言えない気はする。医師は家の不安を取り除くためにわざと笑顔でいるとも考えられるが、そうでない場合はけっこうゲスい。
家はセカンドオピニオンも視野に入れて考えた方が良いのかも知れない。
それにしても医師は家のなんの音を聞いているのだろう。
どんな音をキャッチしようとしているのだろう。
あまりにも気になって私は昨日、眠れなった。
……なんてことはなく、眠気に勝てず早々に毛布にくるまれた。
気になることがあったってね、寝てしまえばなんとかなるんですよ。
あっちの声もこっちの声も「真に受けずに流していればいいよ」と言われたけれど、私の心はただの筒のように流れてなんていきやしない。フィルターがあって、引っかかった物が少しずつ増えていってしまうんだ。
ガラクタで埋め尽くされたら、どこかで大掃除すべく、洗い流せる時間が必要なんです。
だから、また、どこかへ行きたいです。遠くなくても。