ここ数年で私は何を学び何を得ているのか、手ごたえを感じずにわからなくなったりしていた。例えば、学校へ通っている時は学んだことに対してテストがあり、少なからず知識を得たことをはかれたり、感じられたりしていた。それに対し、現状は何ができるようになって、何を学べたというのだろう。
その答えはふとした会話にあった。会社で一緒に仕事をしている女性がいるのだが、彼女には3歳の女の子がいる。女の子は保育園へ通っているのだけれど、最近転園したこともあって情報を得たいらしく、私に色々な質問を投げかけてくる。
「私はこうしたけど、こんなやりかたの人もいたよ」
「そういう時はあれが役に立ったよ」
私は2人の子を育てていて経験したことを少しずつ思い出しながら話す。
そんなことを繰り返していたら「あれ、聞いといて良かったです!助かりました」と度々言われるようになった。おそらくどこにでもある風景で、珍しいことなど何もない。だが、私は人に話せるだけの知識を少なからず得ていたことと、感謝されたことが嬉しかった。
小学校のPTAで地区の集まりがあった時にもそうだった。役員の人がやや迷っていた際に「こうすると良いと思うよ」と助言したら「えこさんがいて良かった」と言ってもらえた。役員をやっている時は仕事をこなすことで一生懸命だったけれど、今は私がした失敗も生かして話すことができる。
どこにでもある風景が集まった時、今までは見えなかったモノが見える一瞬がある。
こないだ行ったクラムボンのライブ会場で購入した『モメント e.p.2』に「タイムライン」という曲がある。
「今 空 すごいよ」出先から届く
あの人の写真 真っ赤な夕暮れどき
タイムライン上には あちこちの町の
ちがう空模様 ピンク グレイ 群青
嬉しいタイミングに 救われたりしてる
陰影の濃淡 浮かんで消えた
歌がききたいの ささやかにゆれる
歌がききたいの それぞれのタイムライン
一曲すべて引用したいくらい素敵な曲だと思う。
それぞれのタイムラインのすべてを私は知ることはないけれど、ふとした時に見えた景色に笑い、満たされ、静かに消えていく。
抱えている辛さをすべて出さずに笑っているあなたも、私も、近づいたり遠のいたりしながら時の動きに沿って歩いていく。
もごもごもご。
私の動きなんてもごもごだけれど、そんでも進んでるんだよ。
庭の至る所にくもの巣ができていた。
もう少し雨が降ってくれたら、きらきら光って綺麗なのに。
数か月前に岐阜にある徒然舎で購入した柴田元幸訳のヘミングウェイ「in our time」を読み始めた今日。