モノを捨てるのが苦手だ。
もしかしたら使えるかも?もしかしたらまだ着るかも?
裁縫もたいしてしないくせに、もしかしたらリメイクできるかも?
もしかしたら……は恐ろしい魔法のようにずっと頭の中をぐるぐる回っている。
でも、ほとんどの場合、結局「もしかしたら」の時はやってこない。
私はモノを捨てるのが苦手だけど、捨てると決めたらとことん捨ててしまう。
こどもの頃からそうだった。母に「モノが多いから少し片づけなさい」と言われ、最初は嫌々始めるのだけれど、スイッチが入るとがんがん捨ててしまい「え?それも捨てちゃうの?」と驚かれた。
本当は、押し入れや物入れが四次元ポケットのようにいくらでも収納できるならば、私は捨てたくはないのだ。耳が取れかかっているうさぎのぬいぐるみだって、角がちょっとだけ黄ばんだカードだって、押しても音がならなくなったおもちゃだって私には大事だった。宝物だった。ずっと上手につきあっていきたかった。
でも、いつかは離れなくてはいけないし、これ以上傷を負う姿を見るのも心が痛いので、自ら別れを告げることを決断した瞬間、私は動き出す。
「えこは慎重で大胆だよねー」
今まで何度友達に言われただろうか。物事を決めるまではうじうじしていて、一歩がとてつもなく小さい。石橋を何度叩いて歩いてるの!ってなぐらいトントコトントコ叩きながらそろそろ歩く。けれど、ある時突然、周りの景色も見えないくらいパーッと駆け出してしまうのだ。
私は臆病だから動き出せないだけだし、大丈夫と思っていてももどこかで怖いし、周りの景色を見たくないから駆け足しているだけなのだ。
それが友達には慎重で大胆に映るのかもしれないと思った。
不安をとりのぞくための表現が相手には伝わらないこともある。
過度に期待してしまい、がっかり度が増したこともある。
それでも私は進んで行く。
周りの目を気にするばかりでは疲れてしまうし、何より私が楽しくないから。