娘の小学校の運動会があった。
いつものように隙間をみつけて、シートを広げる。朝早くからたくさんの人がテントを張っているため、隙間をみつけるのは大変だけど、少人数で見る分には最低限の広さがあればそれでいい。私には動き回る小さな幼児もいないのだから。
プログラムを広げ、娘が出る競技の順番を覚える。娘が出ていない時はぼんやり眺めては他の学年と娘を比べ、ひっそりと成長を感じたりしていた。
お隣のシートではおばあさんらしき人が孫である男の子を一生懸命応援していた。手をぱちぱち鳴らしながら声をあげて応援していたおばあさんに「周りに迷惑だから手をぱちぱちならすなよ」とおばあさんの夫と思われる人が言っていた。
私に声をかけてきた同じ地区のHさんは「うちは6年生だから今年で最後なの」と言った。顔は笑っていたけれど、言葉は少し寂しげだった。
娘よりも下の学年の走りや演技を見ていると可愛いなと思い、クスッと笑う。そしてそのあと少しだけ寂しくなる。ああ、もう娘のこんな姿を見ることはないんだと思ってしまうのだ。
私が座っているシートの周りで追いかけっこをして、親に怒られている幼児の動きでさえ、愛おしくて寂しい。
空がどこまでも青くて遠い。
校庭の砂がシートの端にいつの間にかたくさん乗っていた。
きっと走り回っていたあの子達が乗せていったのだろう。
「来年は1年生なんだから、最後までしっかり座っていようね」
プラスチックの椅子に座り、足をぶらぶらさせていた男の子はおばあさんの顔をちらっと見てから、遠くに座っている赤白帽をかぶった小学生を見つめていた。