どうにか乗り切ろうと懸命に仕事をしていたのだが、ある人の理解しがたい行動があり、やるせなくなった。怒りなどはない。怒りのない理由のひとつは私がそれ以上に考える物事があるからで、もうひとつは私よりも私の置かれた立場に怒りを表す人がいてくれたからだ。その現実だけでもうなにもいらないと思った。
いつも自分の思いが人に届かない場合を想定している。身近な人は私の話を親身に聞いてくれ、寄り添ってくれるけれど、それはバイアスがかかっていると思うのでフラットな意見が欲しかった。先日、ある考えについて初対面の方に話す機会があった。話をしたことにより私の考えは一般的に通用するものであると自信が持て、少しだけ気持ちがラクになった。話を終えて「お話下さる壮絶とも言える内容にたいして、今のあなたは穏やかな表情ですね」と言われた。
「こうして話が出来るまでに時間がかかりました。心を整え、もう揺らぐことがないので進むだけです」
相手はにっこりと微笑んでいた。
寺尾紗穂さんのニューアルバム『北へ向かう』を購入した。とても良い。私が身につけたいと思っている「強かさ」と「しなやかさ」があるように思えた。
車の中で聴いているとき、遠くに見える鈴鹿山脈にうっすら積もった雪が光に照らされて綺麗だと思った。
ああ、私は上を向いて進んでいるのだと実感できた。