電車に乗った。足の裏に伝わってくるモーターの震動と建物が後ろに流れていくような景色を見るのは久しぶりだったため、ずっと外を眺めていた。
広大な田畑に、ひとが数名いた。どうやら写真スポットらしい。外と車内の気温差を思いながら私はごとごと揺られていく。心地よい揺れにだんだん眠たくなった。
子どもの頃から自分の意思で行動しているけれど、もしかしたら私が知らない誰かに操られているのではないだろうかと考えることがあった。例えば宇宙人とか。そういうの、皆が考えることだと思っていたけれど「考えたことない!」と娘にハッキリ言われた。
「私はロボットではありません」というお決まりの確認画面を見ると「ロボットなのかどうか、私が決められるのだろうか。私が答えられるのは自分がロボットではないと信じる能力があるってことだけね」などと、ぶつぶつ言いながらチェックを進めていくぐらい、自分がナニモノであるのか考えて生きている。
ナニモノであってもなくても、電車は私を乗せて目的地まで運んでくれた。駅からは一度だけ行ったことのある場所を記憶だけですたすた歩いて行く。方向感覚が優れていることはひとつの自慢であるかもしれない。用事をすませ、また電車に乗り、本を開いた。たくさん乗っていた人々は私が顔をあげた時にはまばらになっていた。窓の外は闇だった。時々見える明かりがゆっくり動いていく。私が好きな空間だと思った。
駅に着き、近くの駐車場まで歩く。昼は暖かくても夜は冷えるため、亀のように首を引っ込めながら歩いた。駐車場で料金を精算した。1000円札を入れようとしたら、なかなか入っていかず、えいっえいっと格闘している私の手から1000円札が逃げていった。風に煽られ、ふわっと浮いた1000円札をアニメの一場面のごとく追いかけた。焦りながらも笑えてきた。
車に乗り、家までの道を急いだ。私が帰る場所に明かりが灯っているのが見えたとき、体の内側からじんわりあたたかくなっていくような安心感があった。
明かりの灯る家が自分の居場所であり、早く帰りたいと思えることは幸せだと思った。
時間のあるときに栞を作っていたら、だんだん楽しくなってしまい、気がついたらかなりの量になっていた。せっかくなので一箱古本市に出店するときなどに販売しようと思った。
『どこへいってた?』はおはなしも可愛いけれど、絵が好き。ヒキガエルがとにかく可愛い!と思う。