今年も、私が購入した絵本についてまとめてみました。
「今年購入した絵本」で記事を書くのは8年目です。
今年購入した絵本は「今年発売したものに限る」というルールで書いております。(このルールがないと、とんでもないことになるとかならないとか……)
あくまでも、私の個人的趣味思考で選んだ絵本です。また、絵本以外に、児童書、グラフィックノベルなども一緒に紹介しています。
あなたが手を延ばしてくれる一冊が見つかると嬉しいです!
では、よろしければ、最後までお付き合い下さい。
『たまごのはなし』
しおたにまみこ (ブロンズ新社)
表紙に描かれた笑っているような澄ましているようなたまご。たまごはある日、思いました。
「どうして わたしは いつまでも こんなふうに ころがっているんだろ」
だからたちあがってみた。はねてみた。回ってみた。歩いてみた。
たまごが歩いたり、マシュマロと出会って話を始めるところなど、楽しく笑ってしまうお話が3つ収録されています。読みはじめてあまりにも気に入ってしまい「年間ベストだ!」と思ったくらいです。
たまごが話すことは何か哲学的な雰囲気もするし、至極当たり前なことのようにも思います。
ただ、私が感じのはそもそも「当たり前」ってなんだろうってことです。それは私を含め、自身で勝手に決めてしまった枠なのではないかとこの本を読んで思いました。もっと自由に柔軟に生きていたいとたまごが教えてくれました。
けれど、きっとたまごは教えたなんて思っちゃいないですよ。だってそういうたまごが主人公の本なのですから。
『ぼくは川のように話す』
吃音をもっている詩人、ジョーダン・スコットの実体験にもとづいて描かれた絵本です。
「朝、目をさますといつも、ぼくのまわりはことばの音だらけ。そして、ぼくには、うまくいえない音がある」
教室で発言するとき、クラスの皆がクスクス笑います。ぼくはさらに口をつぐみます。
父親がぼくを川へ連れていきます。父親は川を指さし、「ほら、川の水を見てみろ。あれが、おまえの話し方だ」と言いました……。
父親のことばと川が、ぼくの気持ちを大きな泡で包んでくれたように感じられ、とても励まされました。
子どもがつらく、苦しい思いをしているとき、どんなことばをかけたら良いか悩むことがあります。ことばをかけずに見守ることを望まれることもあります。いつも何が正解なのかわかりませんが、私に出来ることはできるだけ子どもを観察することだけです。ただ眺めるのではありません。声にならないことばに耳を傾けるのです。
吃音であった著者が思う、優しき父親の姿がこの絵本には描かれていますが、私は描かれていない父親の心境を考えてしまいます。私が子どもであったのなら、そんな視点では読まないと思うので、絵本は広く多くの方に読んで欲しいと思いました。
『てがみがきたな きしししし』
網代幸介 (ミシマ社)
ゆうびんやさんがてがみを届けるために足を踏み入れた洋館は少し不穏な空気が漂っており、暗い中に何やらたくさんのモノがうごめいています。実態のよくわからないモノたちは誰からのてがみを待っているのでしょう。洋館の「あるじ」に届けられるてがみは「誰からの」てがみで「何が」書いてあるのか最後まで明かされません。この幻想的な世界を1度覗いてしまうと、もう後戻りはできないでしょう。
網代さんが生み出す世界観にどっぷり浸かりながら、暗闇の中で読んだら一層面白いかも知れませんよ。
『る』
さいとう しのぶ (PHP研究所)
ことばあそびの絵本をたくさん描かれているさいとうしのぶさん。今回は『る』からはじまることばを集めた絵本を出版されました。
『る』
しりとりで回ってくると、なかなか面倒なことばです。だって、「る」から始まる言葉ってあんまり思いつかないじゃないですか。「る」から始まる言葉をちょっと思い浮かべて下さい。いくつありましたか?
そんなとき、この絵本さえあればほぼ無敵です。「る」で始まることばを集めただけでこんな面白いとは思ってもいませんでした。だってね、私が好きな鉱石、虫、鳥などが描かれたページがあるのです。ルチル鉱石、ルリシジミ、ルリボシカミキリ、ルリビタキなどなど。このような生物が絵本に描かれることはあまりないので、見るだけでも楽しくなれます。
『あまがえるのぼうけん』
たてのひろし:作 かわしまはるこ:絵 (世界文化社)
前作『あまがえるのかくれんぼ』から2年の時を経て、待望のシリーズ第2弾『あまがえるのぼうけん』が発売されました。
主人公、あまがえるのラッタ、チモ、アルノーが森へ探検に出かけます。ストーリーは特に驚くべき点がありません。けれど、描き方が唸ってしまうくらい素晴らしいのです。かえるを主人公にした絵本は存在しますが、その多くはかえるの持つどこかユーモラスなフォルムと性質が絵本として受け入れやすく、また理解しやすいためだと思います。
この絵本はそれらを含みつつ、自然界で生きるあまがえるの姿を真から捉えて描いています。例えばあまがえるの三匹が身につけている蝶ネクタイ(?)、スカート、帽子は花びらや花のがくなど可愛らしい小道具で柔らかい絵本の世界を見せてくれたと思ったら、次のページでは獲物である虫たちを眺め、掴み、口を開けて食べようとしています。冒険の途中、やぶきり(キリギリス科の虫)に出会い、あまがえる達は逃げ出すのですが、次のページではそのやぶきりはひきがえるに丸のみされています。あまがえる→やぶきり→ひきがえるの構図に体の大きさ、習性、弱肉強食の世界を感じずにはいられません。
また、昼の森と夜の森を対比させていることがメリハリを与えてくれています。この本は、大きな木に集まるたくさんの虫たちを描いていますが昼と夜では集まってくる虫たちが違います。夜は背景が黒になるため、虫を補食するあまがえる達の姿がより際立って見え、迫力を増している気がしました。
いつも素晴らしい虫や鳥の話を描く舘野鴻さんと生物画家、かわしまはるこさんの世界は他の絵本とは一味違う「可愛らしさと虫たちの世界」を魅せてくれます。
最後に、前作の感想でも書きましたが、この本には次の一文が根底にあるのではないかと思っています。
『にげたり かくれたりするのはよわむしなことじゃないよ』
『海のアトリエ』
堀川理万子 (偕成社)
おばあちゃんの部屋に、女の子の絵が飾ってありました。「この子はだれ?」とたずねると、おばあちゃんは「この子はわたしよ」と答えました。そして、子どもの頃の特別な思い出を話してくれました。
おばあちゃんはある夏の1週間、海辺のアトリエに住んでいる絵描きさんと過ごした話をしてくれました……。
おばあちゃんは子どもの頃、学校へ行けなくなります。そんなとき、絵描きさんがうちへ遊びにおいでと誘ってくれ、過ごした日々を描いているのが『海のアトリエ』です。この絵本を読んでいるとさまざまな感情が沸き上がってきます。切ないのか、嬉しいのかわからなくなってきます。絵描きさんは子どもにたいして誠実で、子ども扱いをしません。何かものすごく特別なこともしません。絵描きさんの日常の中に子どもであったおばあちゃんが入り込み、ともに過ごす姿に「寄り添う」ことを考えさせられました。誰かの日常は他人にとっては特別であるのかも知れないとも思いました。
『海のアトリエ』は今年、絵本としては初のドゥマゴ文学賞を受賞しました。「絵本は文学である」と仰って下さった江國香織さんに私も同じ気持ちだと伝えたいです。
『ともだちのいろ』
きくちちき (小峰書店)
真っ黒い犬のくろちゃんはいろんな色の友達に「くろちゃん なにいろ すき?」と尋ねられます。くろちゃんはそのたびに目の前にいるお友達の色を答えていきます。そしてさいごにお友達みんなから「くろちゃん なにいろが いちばん すき?」と尋ねられ困ってしまいます。その答えは絵本的に予想できるものですが、きくちちきさんの柔らかいのに躍動感ある絵からくろちゃんの困り具合、みんなの喜びが感じられ、晴れやかな気持ちになりました。
この本でくろちゃんは「くろちゃん なにいろ すき?」と尋ねられたとき、なぜ目の前のお友達の色を答えたのかが気になっています。絵本にはもちろん描かれていませんが、幾通りもの考えが浮かびます。単純に目の前にその色があったから。目の前のお友達を喜ばせたかったから。自分であれば何と答えるだろうと考えてしまいました。
『おひさまわらった』
きくちちき (フレーベル館)
きくちちきさんが木版画で描いた絵本です。きくちちきさんが描く生物は躍動感があり、色づかいが素晴らしいのが特徴だと思っていますが、木版画でもそれらが生かされ、広い世界を見せてくれます。
草や花、虫たちがいる森はきらきらしていて、すべての命がつながっているのです。文章も詩的で、何度も読み返したいと思いました。
『めんぼうズ』
かねこまき (アリス館)
あなたの家にある綿棒。ふたはちゃんと閉まっていますか?ふたの閉め方がゆるいと綿棒が逃げ出すかも知れませんよ……。
夜になり、ケースから抜け出しためんぼうズのお話です。夜のまちを駆け抜けるめんぼすズが面白いやら怖いやら。すべて擬音で構成されており、読み方次第で話に広がりを持たせることが出来そうです。しっかりオチまでついているのも良いのです。
作者のかねこまきさんは水溶液に浸した綿棒を半乾きの状態にし、ピンセットでつまみ、立体作品のめんぼうズを作られてから、このお話を書かれたようです。立体作品を作られてから絵本を描く作家さん、何人かいらっしゃいますけど(「どんめくり」のやぎたみこさんもそうですね)皆さんの立体作品も楽しみのひとつです。
『カサコソのかくれんぼ』
ザ・キャビンカンパニー (偕成社)
『カサコソのかくれんぼ』は大人も子どもも夢中になってしまいそうな探しえ絵本です。
探すのは(ハッキリ書きますが)ゴキブリのカサコソです。カサコソはやまださんと一緒に暮らしています。ええ、ゴキブリですから、カサコソが勝手に一緒に住んでいると思っているだけのようです。やまださんはそのことを知りません。
やまださんのおうちの屋根裏部屋にはやまださんの大切なものがたくさん置いてあります。お絵描き道具、ふるいぬいぐるみ、ギター、ドールハウスなど、どれも不思議で可愛らしく絵に心が奪われていきます。そのあいだをやまださんとかくれんぼをしている(つもり)のカサコソがあっちへ行ったりこっちへ行ったり。最後の最後はゴキブリらしいオチで笑いました。
ザ・キャビンカンパニーのPOPな色づかいがこの絵本を更に楽しくしてくれていると思いました。
また、触れずにはいられなかったのですが、この本を出版している偕成社の説明に一言も「ゴキブリ」と書かれておらず、GKと書いていることに「どこまで配慮が行き届いているのだ!」とびっくりしました。私は配慮せず、ハッキリと書きました。ゴキブリもリスペクトすべき虫なのです。
『わたしのバイソン』
ガヤ・ヴィズニウスキ (偕成社)
少女とバイソンの交流を描いた絵本です。
冬になると姿を現すバイソンと少女は少しずつ心を通わせあいます。次の冬、またその次の冬、少女はバイソンに会える冬を心待ちにし、たくさんのおはなしをします。ところがある冬の日、バイソンは姿を現しませんでした……。
生きているものは老いていきます。それは人間も動物も同じです。楽しい日々がいつまでも続いていくわけではないことをこの本が表現してくれています。
喪失した痛みのあとにある、安らかな感情は幸福であると私は思います。
静かな心を取り戻したいときに読みたい絵本だと思いました。
『しずかな夏休み』
キム・ジヒョン (光村教育図書)
ある夏を過ごした少年のはなしです。「静かな夏休み」のタイトル通り、特に何か大きなことが起こるわけではありません。この絵本の素晴らしさは「静かな」ことを追及したことにあると思います。まず、文字がひとつもない、文字なし絵本であることで絵から情報を読み取ることに没頭できます。また、絵が淡いセピア色で描かれているページが多く、私たちが何処かで観たような懐かしい風景を思い出させます。
子どもの頃にみた山や木々、星たちのことを想像させ、なぜか泣きそうになりました。
作者、キム・ジヒョンさんがはじめて描いた絵本のようですので、これからが楽しみです。
『夜をあるく』
マリー・ドルレアン:作 よしい かずみ:訳 (BL出版)
真夜中、お母さんに起こされた子ども達は家族四人で出かけます。さて、どこへ向かっているのでしょう。
私は夜の町を歩くのが好きです。繁華街ではありません。人の気配がする家の前、静けさに包まれた学校の横、風が吹くと大きく揺れて怪物のように見える木々。私が歩いて見える夜の景色が、この絵本から感じられました。夜に歩く絵本はいくつかあると思うのですが、『夜をあるく』の素晴らしいところは美しい青色にあると思います。通常、夜であってももう少し明るいトーンの青であることが多いようにおもうのですが、この本は夜道を歩いているくらい暗く美しい青なのです。闇ってことばがぴったり。その青の効果は絶大ではないでしょうか。また、フランスの絵本であるのに、日本のようにも見えるのは、どの国にもあるありふれた光景を写し出しているからだと思います。
『街どろぼう』
junaida (福音館書店)
山のてっぺんに巨人が住んでいました。巨人は長いあいだ、たったひとりで寂しく暮らしていました。ある夜、巨人はさびしくてさびしくてしょうがなくなり、山のふもとの街まで下りていき、いっけんの家を山のてっぺんに持ち帰ってきたのです……。
たったひとりでいるとき、話し相手が欲しくなることがあります。たったひとりでいるとき、わいわいにぎやかに暮らしているひとの輪に入りたくなることがあります。
巨人もそんな気持ちでいっけんの家を山のてっぺんに持ち帰ったのかもしれません。一般的に巨人は身勝手な行動をしたと判断されると思いますが、巨人はその家の住人に丁寧に話し、住人の要望も受け入れます。やり方は多少乱暴でも、巨人の優しさや謙虚な姿がうかがえました。さて、巨人は楽しく暮らしたのかと言えば……そうでもなかったりします。
結果的には居場所があったわけですが、人の多い賑やかな場所=心を満たす場所ではないことについてしばらく考えました。
装丁の美しい本なので誰かに贈りたくなりました。
『野ばらの村』シリーズ
ジル・バークレム:作・絵 こみやゆう:訳 (株式会社出版ワークス)
子どもの頃、大好きだったジル・バークレムの『野ばらの村』シリーズがこみやゆうさんの訳で復刊しました。
野ばらの村に住んでいるねずみたちの暮らしを描いているのですが、お話も絵も何もかもが素敵なのです。四季が感じられる植物の数々、豊かな心をもつねずみたちのやりとりに、こんな暮らしをしてみたいと憧れました。絵は細部まで細かく描かれており、木の中で分かれている部屋や、食器棚にさりげなくかけられているティーカップに至るまでとろけるような気持ちで眺めていたものです。
あれから数十年たった今眺めても、やはりとろけてしまいそうです。
心が荒んでいても、ポッと明かりを灯してくれるような優しい気持ちになれます。
今年は春夏秋冬の季節ごとに4冊刊行され、来年も続いていくようですので今から楽しみにしています。
『どんめくり』
やぎたみこ (ブロンズ新社)
『ほげちゃん』シリーズでお馴染みのやぎたみこさんの『どんめくり』!
上下が別々にめくれる仕掛けになっており、いろんな組み合わせのどんぶりが楽しめます。まずは上下一緒にめくっていきます。てんぷらどん、かつどん、やさいラーメン、カレーライス……ん?ん?一緒にめくっても途中から笑えてきました。さて、今度は好きな組み合わせを考え出します。個人的には「ぼんさい」が強すぎてどの組み合わせにしても笑ってしまいました。
この本は厚手のボードブックで出来ていますので、小さいお子さんがいらっしゃる方も破られる心配がありません。親子で楽しむもよし、ひとりで笑い転げるもよし!231種類の組合せがあるようですので、皆さん、すべてにチャレンジしてみてください!!
『てづくり おもしろ おもちゃ』『Chock Full o' Fun』
1968年。かこさとしさんは、日本の子どもたちに愛されてきたあそびとその作り方を、愛らしい絵と言葉で綴った本『Chock Full o' Fun』をアメリカで発売されました。それが約50年後の今、日本語に翻訳し出版されました。同時に英語版も復刻したので、私は箱入り2冊セットを購入しました。
すぐにやりたくなるような遊びと、もう今ではやらないのではないかと思われる遊びが載っており、時代背景も含めとても興味深いです。2冊セットだと、日本語と英語を比べることも出来るので尚、楽しいかと思います。
かこさんからの遊びのプレゼント、受け取ってみませんか?
『わたしのマントはぼうしつき』
東 直子:作 町田 尚子:絵 (岩崎書店)
「ふちのところがふさふさの わたしのすてきなマントはぼうしつき」
くまはお気に入りのあかいマントをいつも着ています。マントはいつもくまと共にいます。ぼうしで感情を隠したり、柔らかい風が吹く春の日も寒い雪の日もマントはいつも一緒です。でも、暑い夏の日は……?
歌人、東直子さんが書かれる文章がとてもリズミカルなため、どこで区切って、どんな抑揚をつけて話したら面白いのかなぁと考えてしまいました。町田尚子さんが描かれた絵も素敵。そして、猫を描かせたらピカイチの町田さんらしく、今回も猫が登場するので必見です!
『コールテンくんのクリスマス』
B.G.ヘネシー:作 ジョディー・ウィラー:絵 ドン・フリーマン:原案
木坂 涼:訳 (好学社)
『コールテンくんのクリスマス』はデパート売り場にいる「くま」がクリスマスに誰かのプレゼントに選ばれたくて、たくさん考え、行動するおはなしです。デパートですので、動き回るだけでいろんなものが目につきます。「くま」は誰かのプレゼントに選ばれたかったわけですが、ひょんなことから「くま」にとても素敵なプレゼントがありました……。
『くまのコールテンくん』をご存知でしょうか?私の娘が子どもの頃に好きだった絵本です。この『コールテンくんのクリスマス』は『くまのコールテンくん』よりも前のお話で、最後は『くまのコールテンくん』の冒頭へ繋がるようなかたちになっています。
私も『くまのコールテンくん』が大好きなのですが、ぬいぐるみのくまがコールテンくんになった理由をはじめて知り、胸がいっぱいになりました。このお話を知ると、より『くまのコールテンくん』がやさしいひとに出会えたことに喜びを感じます。
また、『くまのコールテンくん』のズボンのボタンがなぜとれかかっていたのか知れて嬉しかったです。
『名前のないことば辞典』
出口かずみ (遊泳舎)
タイトルから「名前のないことばってなんだろう?」と思われた方もいらっしゃると思います。
「名前のないことば」とはオノマトペや感嘆詞などのうち、同じ語が2つつながった言葉のこと。具体的には「わくわく」「ぱりぱり」「しゃきしゃき」などです。この本はそんな「名前のないことば」を意味、例文、イラストでわかりやすく、しかも面白く説明してくれるのです。
さらに、さらに!はい、そこの奥さん!ちょっと立ち止まって!!
なんと、「恋するいぬの章」「能天気なねこの章」のようにストーリー仕立てなのです!すごい!たぶん、めちゃくちゃ時間かかってる!そんで、面白い!(繰り返す!)
え?奥さん、2冊買うって?お目が高いっ!誰かにプレゼントしても喜ばれるもんね!ぜひぜひ、そこの奥さんも買ってってー!損はさせないよ!
『旅する小舟』
ペーター・ヴァン・デン・エンデ (求龍堂)
ふたりの人物が折った紙の舟が大海原を冒険する話です。ことばが一切ない、文字なし絵本なのですが、緻密な絵に引き込まれ、なかなか次のページをめくることができませんでした。なんとも不思議で奇妙な世界なのです。紙の舟は長旅でへたれ、一時はどうなるかと思いましたが、流れに身を任せることも時には必要なのではないかと思わされました。
大きなことに立ち向かう勇気を小舟からもらった気がしています。
岸本佐知子さんが書かれている解説エッセイ付き。
とても素敵な絵本です。ペーター・ヴァン・デン・エンデはこれがデビュー作とか。今後に期待したいです。
『さいごのゆうれい』
斉藤 倫:作 西村 ツチカ:画 (福音館書店)
世界中が「かなしみ」や「こうかい」を忘れて、だれもが幸せだった〈大幸福じだい〉と呼ばれた時代がありました。そんな時代の夏休み、小五だったぼくは、田舎のおばあちゃんちに預けられました。"ぼく"が出会ったさいごのゆうれいを救い、世界を取り戻す幻のような4日間の話です。
「かなしみ」や「こうかい」がないことは果たして本当に幸せなのでしょうか。人間が感情のあるいきものである以上、「たのしさ」や「うれしさ」だけで過ごすことは難しいと思います。「かなしみ」や「こうかい」の思いはできるだけ経験したくはないけれど、その感情があるから、私のこころは豊かさを生んでいるのではないかと思います。今年、私が心を動かされた一冊です。
作者、斉藤倫さんは詩人でもありますので、美しいことばに触れることもできます。
この本は児童書の分類に入るかと思いますが、そのような枠でおさまることのないメッセージをぜひ受け取ってみて下さい。
『解きたくなる数学』
学生時代、数学は得意でも不得意でもありませんでしたが、「こんな勉強が将来役に立つのだろうか?」と思ったことはあります。
『解きたくなる数学』はこんな勉強、必要なの?と思っていた数式を身近な道具で表現してくれており、可視化できることによって論理の組み立てがやりやすく、とても面白かったです!
あー、そういうことか!と思った問題も幾つかあり、中・高校生時代に読みたかったなぁと思いました。
数学が好きな人にもそうでない人も楽しめる一冊です。
『THIS ONE SUMMER』
マリコ・タマキ:作 ジリアン・タマキ:画 三辺律子:訳 (岩波書店)
夏休みに別荘地で過ごした少女の物語です。この本はグラフィック・ノベル※*1なのですが、グラフックノベルだからこそ表現できる心の機微が素晴らしいです。家族のことや性のこと、子どもから大人へ変化していく少女の心は痛み、苦しみ、もがきます。
それでもやってくる明日へ進んでいくしかないのだと、背中を押された気がしました。
『秘密を語る時間』
ク・ジョンイン 呉永雅:訳 (柏書房)
中学生のウンソには、9年間、言えなかったことがある。
『秘密を語る時間』もグラフィックノベルです。こちらは『THIS ONE SUMMER』と比べると、もっとゆるい線で描かれており、最初はちょっと苦手かも……(ごめんなさい)と思ってしまいました。けれど、手にとって読んでみたら、この内容であればむしろ、この絵で良いのだと思いました。主人公、ウンソには誰にも言えなかったことがあります。それは、子どもの頃に被害にあったこと。被害にあいながらも、そのことを口に出して良いものか悩み、9年間も黙ってきたのです。黙ってきたのには幾つかの理由があります。読んでみると、私でも考えそうなことばかりです。
では、思いが抱えきれなくなったとき、どうしたら良いのでしょう。ウンソの勇気と周りの人たちの反応に自然の涙がこぼれてきてしまいました。私は他人に委ねることを恐れすぎていたのかもしれないと思いました。
まだ、理解してくれない人もいるのかも知れませんが、社会はどんどん変化しており、きっと私ももっと声をあげられるようになるでしょう。
声をあげられないあの子に。
中学生ぐらいのあの子に。
読んでもらいたい本だと思いました。おすすめです。ぜひ。
『みみをすますように』
酒井駒子 (ブルーシープ)
展覧会『みみをすますように』の図録として刊行された画集です。
酒井駒子さんの魅力は間違いなく絵にあります。子どもがふと魅せるなんとも言えない表情が表現されていて、いつも息を飲みます。精密に描いて似せるとかそういうのではないのに、そこにいるのはあのときの私であり、あなただと思います。
静けさと美しさは私にことばをかけてきます。ある日は「おちついて」、またある日は「よくがんばったね」、なんでこんなに優しく語りかけてくれるのだろうと思います。
絵本において、絵がどれだけのことばを私たちに語ってくれるのか、この画集から伝わってきました。
大好きです。それ以外、伝えることはありません。
巻末にある、菅啓次郎さんの文章も素敵ななので、こちらも読んでもらいたいです。
***
今年もたくさんの本に出会いました。
それはこの世に素敵な本を生み出してくれる作家さん、編集者さん、出版社がいて、本屋さんがあるからです。
いつもありがとうございます。
一冊の本が私を支え、明日への希望を持たせてくれたことは一度や二度じゃありません。
また、来年も期待し、明日へ向かってジャンプしたいと思います!