視覚でとらえることのできない春を体で感じる。この時期、鼻がむずむずすることで春を感じる人は多いと思うが、私はそれよりも顔がぴりぴりすることで春を感じとる。
紫外線。
侮ることなかれ。
日焼け止めを塗るが吉。
心が水平ではないと思うとき。
私は花を買いに行く。
花屋さんで花を選ぶことは一種のカラーセラピーだと思う。彩り豊かな場所ででぐらぐらしていた心を元の位置に戻す感覚。その中から今の自分が思う色を選び持ち帰る。赤、青、黄色、混じりあった色のなかで私の色を探す。
あなたは今、何を考えてますか?と自身に問う。
たいてい、私には答えなどなく、今日をやり過ごし、明日が来るのを待つ。
明日が来ることが怖かった数年間の記憶が少しずつ薄れていく。明日に大きな希望がなくても、明日が怖くないことだけでどれだけ救われるだろう。
何をしようか考える時間があるなんてどれほど満たされているのだろう。
それでも私は欲張りなので、さらに欲しいものに手を伸ばす。
山をひとつ越えるたび、恐れが少しずつ減っていく。
私が背負っている苦しみを詰めこんだリュックサックはおそらく底に穴が空いていて、私が歩くたびコロコロ苦しみが落ちているんだ。
次にその道を歩く人は私の苦しみを踏みつぶしてくれるだろう。
その次の人がさらに踏みつぶし、粉のようになっていくのだろう。
私は知らぬ間に軽くなったリュックサックを背負っていて、いつかリュックサックも落としていくのだろう。
そんな未来を想い描いている。
そこが杉林でないことを想像して。くしゅん。