バンビのあくび

適度にテキトーに生きたいと思っている平民のブログです。

一緒に本屋へ行きましょう

1月31日。

渋谷の東急本館が閉店とテレビで放送されている同日に、名古屋の七五書店も閉店した。

私がはじめて七五書店を知ったのは、友人からだっただろうか。それとも本屋図鑑だろうか。どちらかは定かではないが、育児で慌ただしく、本もまともに読めない数年間があり、やっと本を読む時間が持てたあの頃だと思われる。本を読むことが再び楽しくなってくると、今度は本屋に興味を持つようになった。七五書店はそんなときにはじめて向かったと記憶している。海外文学の小冊子『BOOKMARK』を置いている本屋がこの辺りでは七五書店しかなかったのも訪れるきっかけとなった。

新瑞橋駅から緩やかな坂をのぼっていく。右側には大きなパチンコ屋、左には競技場の照明と川が見える。川には時折、鳥がいて優雅に遊んでいた。スプレーで落書きをされたシャッター、学習塾、焼肉屋、どれもこれも何処かにありそうな風景が続いたその先に静かな佇まいの七五書店が見えてくる。

店内に入ると落ち着いた空気の中に、ほんの少し背筋を伸ばしてしまうような空気が紛れ込んでいる。歩を進め、棚の前に立ち、棚と会話をする。七五書店の棚は私が手に取りたい本も多く、地元作家の本、短歌や詩歌なども充実していて、端から端までくまなく眺めては、手に取ることを繰り返す。大抵、3冊くらいは手に取ったまま、レジへ向かう。

多くを語らない店主にカバーをかけてもらうと、そのあいだは何もすることがないので、なんとなく店内を見渡す。やっぱり良い本屋だなぁと思う。購入者層を意識した本とほどほどの主張のバランスが絶妙なのだと思った。


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1月は忙しく、足を運べない可能性もあったが、何とか時間を作って、七五書店へ。

この日は夏葉社の島田さんが一日店長をされていらっしゃった。エプロンがとても似合う島田さんが楽しそうに棚を整頓している姿が印象的だった。


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ずっと買いそびれていた『レンブラントの帽子』を購入。島田さんにサインもしてもらった。本と購入した本屋の記憶は結びつくので、この本を七五書店で購入できて良かったと思った。

***

私が住んでいる街でも、長く営業していた料理屋が閉店し、近々、大きな結婚式場も閉店すると耳にした。街並みが変わっていくことに寂しさを感じつつ、私はどれだけ街と会話をしただろうかと考える。

閉店するときだけ寂しがるのはエゴに他ならないのではないだろうか。

 

なんとなくモヤモヤとした気持ちを抱えていた今日、Twitterを開いたら埼玉県行田市にある忍書房のツイートが目に飛び込んできた。

 

数年前、火事になり、店舗が焼失した忍書房が、また再生するようだ。火事の半年後ぐらいに伺った時は仮店舗で営業されており、「大変でしたね……。でもお元気そうで安心しました」とお声がけしたところ、「私にはこれしかないんで。本屋しかないと思っているんです」と店主はおっしゃった。

「これしかない」と思えるものはなんて強いのだろうとその時感じ、私自身もこれしかない、と思いながら進みたいと願ったのだった。

新たに忍書房がスタートしたときにはまた、店主に会いに行きたい。そして、いつものように夏葉社の本を1冊購入し、本の話をしたい。上林暁の話をたくさんしてくれ、私がきのこ柄のバッグを持っていたためか、「この棚はきのこや苔の本にしようかな」などと、楽しそうに語る姿を見ていたい。

 

そんな本屋にあなたと一緒に行きたいです。

 


宮内優里 / 読書 (feat. 星野源) - YouTube