選挙の投票所入場券がなかなか届かなかったため、昨日、なにも持たずに期日前投票へ向かった。
「投票所入場券は届いていないですよね。こちらの机で用紙にご記入下さい」
係の方は入場券が届いてない前提で話を始めた。いつもより拡大された用紙記入スペースは投票所入場券の発送遅れによる、宣誓書記入の場所だった。記入した宣誓書を持ち、いつものように投票を済ませた。
今日、投票入場券がポストに届いていた。使うことのない投票入場券をそのまま捨てるのはなんだか気が引けたので、とりあえずミシン目にそってピリピリ開封して入場券を手に持った。裏には期日前投票の宣誓書としていくつかの事由が記載されている。仕事や旅行、心身の障害等で困難であるなどの事由があるが、私が期日前投票をするのはこれらの事由とは異なる。私が期日前投票をするのは指定の投票所が元夫と同じ場所であるためだった。万が一でも顔を合わせることがないように期日前投票をしている。
家を出た当時、娘が小学生であったため、転校することのない同学区で引っ越しをした。心の安穏を考慮すればもっと遠くに引っ越しをするべきなのは明白だが、私の勝手な行動による生活の変化で子どもの交友関係を断つことを私は望まなかった。結論としてはあの時の最善だったと思う。
現時点でここに住む意味はあまりなく、いずれ引っ越しをしても良いのかも知れない。けれどなかなか居心地の良い物件なので選挙を除けば特に不満はないのだった。
誕生日だったので、私のために自分でアクセサリーを買った。
お安い真鍮製。いろいろ気にせずガンガン使えるのが魅力。雲のようなかたちのフープピアスはかなり大きい。私は満足なのだが、念のため娘に「大きすぎるかな?」と尋ねたところ「みんなそれくらい着けてるでしょ」って言われたので安心した。私の周りにはこのサイズを着けてるひとは見かけないが、どこのみんななのだろう。まあ、大きすぎると言われたところで身につけるのだけど。
娘のバイト先に私の数少ないママ友が来ていろいろ近況を語っていったらしい。自分や子どもの体調、生活の変化などを話して、私のことをほめて帰って行ったそうだ。何もほめられることをしていないのだが、悪く思われていないなら良いかと流した。
彼女はいつも大変そうで少しでも気が楽になることを願っている。
私の心もざわざわすることが多くなったので、落ち着けるために机の上に置いてある三角みづ紀『よいひかり』を開いた。
この本の最初にある詩をここに引用し、記しておく。
『コーヒーカップ』
まだ目覚めない町をながめて
青色の薬缶をコンロに置いた
だれかに命じられたことでは
けっしてないのだけれど
あたたかいコーヒーを飲んで
ようやく わたしの朝
時折、舌をやけどして
慌てて水をふくませる
すべてうまくいくはずはないから
そんなはじまりかたもあるだろう
うすぐらい町の街灯が
ようやく眠りについて
すこしずつあかるんで
鳥たちが朝をつたえて
やけどした舌を確かめながら
このささいな痛みを知ること
冷めていくカップを手で包み
はじまりがはじまることを
やさしい沈黙のなかで
飲みこんでいく