娘と車で出かけたときに、このCDをかけて欲しいと1枚のCDを渡された。それは少し前に私が娘に買ってあげた山下達郎のCDだった。山下達郎はサブスクを解禁していないため、曲を聴くには購入が必須となる。
娘は購入した山下達郎のCDが届くとうれしそうに開封したのち、で、このCDを、聴くものってあるの?と聞いてきた。プレーヤーの存在を確認せずにCDが欲しいとは見切り発車もいいとこである。私は棚から息子が置いていったCDラジカセを出してあげた。使い方を教え、しばらくはラジカセでCDを聴いていたが、車でもCDが聴けることに気づいたようだった。
早速、娘から受け取ったCDを車のプレーヤーにセットし、曲をかけた。
私は特に山下達郎に思い入れはないのだが、聴いたことのある曲が次々に流れてきた。「高気圧ガール」「クリスマス・イブ」「アトムの子」、音を聴いていたら歌詞が浮かんできたので口ずさんだ。
あれ?お母さん知ってるの?山下達郎の隠れファン?などと娘は不思議そうに言った。私もなぜ歌えるのだろうと思ったが、山下達郎の曲はドラマやCMで流れることが多かったので、知らぬ間に覚えてしまっているようだった。考えてみれば、平成初期はまだインターネットも普及しておらず、娯楽の多くはテレビかラジオだった。ドラマなども皆が観ているため、面白いと聞けば私も観ようとテレビをつけた。CM中につい触ってしまうような携帯電話もなく、トイレに行く以外はなんとなくCMを眺めていたのだった。
この曲はシュガー・ベイブ時代のやつ!、「DOWN TOWN」が流れてきたとき、娘は言った。あ、シュガー・ベイブとかも知ってるんだ、それならシュガー・ベイブのメンバーもわかる?と問いかけるたら、山下達郎以外は知らないと娘は答えた。
そうなんだ、私は大貫妙子が好きなんだけどなあと答えたあと、そういえばベースの寺尾次郎は寺尾紗穂のお父さんだよと教えてあげた。
え!そうなの!と驚く娘。
山下達郎から私が色々助けてもらった寺尾紗穂さんまで話が繫がってしまい、なんだか愉快だった。寺尾紗穂さんの連絡先も知ってるからお母さん、すごい!とはじめて娘に尊敬された。
先日、ネットラジオ、「伊藤銀次のPOP FILE RETURNS」に寺尾紗穂さんがゲストとして登場した。伊藤銀次さんと寺尾紗穂さんは初対面だったようだが、寺尾次郎さんの話でだいぶ打ち解けていた。寺尾次郎さんはカレーライスのライスとルーを全部混ぜちゃう人だったよと伊藤銀次さんが話すと、寺尾紗穂さんがそれはイヤですねって返してて笑ってしまった。
父親が死んだあとに父親のエピソードを聞くのはどんな気分だろうと想像したが、自分に見せてくれなかった父親の顔を知るのは怖いようで嬉しいことではないだろうかと思ったのだった。