
先日、紐を買いに手芸用品店へ行った。いくつも並んでいる紐の中で太さ、色、素材などを吟味し、気に入ったものを手にとってレジへ向かった。10cm単位での販売のため、長さを指定し店員にカットしてもらう。赤、茶、ベージュをそれぞれカットしてもらう際、店員が間違えて茶を2回カットしてしまった。私が指摘して店員も間違いに気がついたものの、1度カットしたものはもう元には戻らない。困った様子の店員を目にし、思わず「それも買います」と口が勝手に動いていた。
「いや…それはとても悪いので」
「いえいえ、使いますから良いですよ」
私にはこういうところがある。困った表情のひとを放っておけないのだ。
まあ、考えてみれば私はその紐を使いこなすことができるから良い。
予定より多く購入した紐は栞に使うつもりなので、皆買ってちょうだい。
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翌日、ショッピングセンターの立体駐車場でエレベーターに乗ろうとしたら、エレベーターの中から大声で泣いている男の子がひとりで出てきた。私がいた場所は駐車場しかない階で大変危険なため、男の子の目線に合わせてしゃがみ、声をかけた。どうやら下の階の店舗でお母さんとはぐれてひとりでエレベーターに乗ってきたようだった。私は男の子と一緒にお母さんとはぐれた店舗まで行くことにした。
ゆっくり立ち上がろうした際、膝がロックしていて足が真っ直ぐに伸びないことに気がついた。半月板損傷によるロッキング症状を起こさないように常々気をつけていたのだが、泣いている男の子を放っておけず、とっさにしゃがみ、膝を深く曲げたためロックしてしまったらしい。とは言え、ここで私が動けなくなるのは男の子を不安にさせるだけなので、私に手を伸ばしてきた男の子の手を握り、足を引きずりながらエレベーターに乗りこんだ。男の子は肩や背中をぽん、ぽんと叩いてあげるとだいぶ落ち着いてきた様子だった。エレベーターを降り、ゆっくりと歩く。右足の膝が伸びないので少しの段差を降りるのも時間がかかった。レジで店員に声をかけ、男の子が迷子だと告げた。
とりあえず私の使命は果たしたので近くにあったベンチに腰かけた。さて、この膝をどうにかしなくてはならない。ベンチに座ったままゆっくり右膝を伸ばすことを数十回繰り返し、半べそになりかけたとき、かたっと膝がハマったらしく、二本足で真っ直ぐ立てるようになった。まだほんの少し違和感はあれど、立てること、歩けることが喜ばしくてしかたなかった。
先ほどは危なくて乗れなかったエスカレーターにも乗れる。
足が前後に動く。
身軽にどこにでも歩いて行けた。