
最近読んだキム·ヨダム『ケアする心』と現在読んでいる金原ひとみ『デグリネゾン』、それからドナテッラ·ディ·ピエトラントニオ『傷つきやすいものたち』にパンデミックの様子が描かれている。
『ケアする心』は韓国、『デグリネゾン』は日本、『傷つきやすいものたち』はイタリアの本になるのだが、全世界が未知なるウイルスに出会い、怯え、生活の制限を余儀なくされたことが文章の端々から感じられる。それまで何気なく過ごしていた日常が当たり前ではなくなり、何事もないことが尊く思えた日のことを、私も含め多くの人は忘れてきている。
人間は忘れるいきものであり、忘れることは自らを守る術でもある。下手に記憶力が良いとツライ記憶も抱えてしまい、心が病むのだという。
たださ、ちょっとさ、昨今のなんやかんやを見ていると、私たちはいろいろなことを忘れすぎではないだろうかって、思っちゃうよね。
自戒をこめて。
夜、国道を車で走っていたら、後ろから音が聞こえてきた。もうしばらくすると赤いランプが近づいて来るのが見えた。救急車だった。速やかに横に避けて車を停車させる。前の車も後ろの車も同じように避けて車を停車させていた。
私の横を救急車が通ったとき、車のダッシュボードが一瞬、赤く染まった。やがて赤色は消え、サイレンが遠ざかっていく。車は一様に道路へ戻り、列をなして走って行く。私も何事もなかったかのようにまた車を走らせた。