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バンビのあくび

適度にテキトーに生きたいと思っている平民のブログです。

キャラメルボックス『無伴奏ソナタ』を観ました

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無伴奏ソナタ | キャラメルボックス 2014 Greeting Theater | 演劇集団キャラメルボックス

三重県総合文化センターの20周年記念事業キャラメルボックス初の三重公演。最近、三重県総合文化センターはとても頑張っていて、田舎でも色んな公演が観られて嬉しいかぎりです。

以下、ネタバレも含まれますので、これからご覧になる方はお気をつけて下さい。

キャラメルボックス無伴奏ソナタ』はSF作家であるオースン・スコット・カード無伴奏ソナタ』を舞台化したものです。原作はわずか36ページしかない短編ですが、その世界を壊さずに、むしろ『音』による厚みさえ加えられた素晴らしい作品です。

すべての人間の職業が、幼児期のテストで決定される時代。
クリスチャン・ハロルドセンは生後6ヶ月のテストでリズムと音感に優れた才能を示し、2歳のテストで音楽の神童と認定された。そして、両親と別れて、森の中の一軒家に移り住む。そこで自分の音楽を作り、演奏すること。それが彼に与えられた仕事だった。彼は「メイカー(創り手)」となったのだ。
メイカーは既成の音楽を聞くことも、他人と接することも、禁じられていた。ところが、彼が30歳になったある日、見知らぬ男が森の中から現れた。
男はクリスチャンにレコーダーを差し出して、言った。
「これを聴いてくれ。バッハの音楽だ…」

舞台は原作と同じように「音合わせ」「第一楽章」「第二楽章」「第三楽章」「喝采」の構成で場面が変わります。

主人公、ハロルドセンは既成の音楽を聴くことなく、小鳥のさえずりや小川のせせらぎなど、森の中で聴こえる音からインスピレーションを受け、素晴らしい音楽を創り出していました。けれど、そこでリスナーの1人から魅惑的なバッハの音楽が入ったレコーダーを渡されるのです。最初は興味を示さずとも、見るなと言われれば見たくなり、聴くな言われれば聴きたくなるのが「人」の常。バッハの音楽を聴いたことは、程なくして「ウォッチャー」に勘づかれてしまいます。

法律を犯したハロルドセンは「メイカー」を辞めさせられ、違う職に就くことになります。音楽に触れることも禁じられます。それは法律だから。「法律」こそが人々を幸せにするのだから。法律を犯せばペナルティを課せられるとわかっていても、ハロルドセンは行き先々で音楽に触れてしまいます。

ハロルドセンにとっての「生きること」は音楽であり、それが親からも引き離され、友達もいなくなった彼にとって唯一の「幸せ」だったのです。

「第一楽章」はバッハの音楽を聴いてしまい、ウォッチャーに見つかる所までなのですが、ここは導入部の役割も担っていて、話の筋が見え始めたなと感じたところでした。ハロルドセンがウォッチャーに捕まり、普通の暮らしが出来るよう再教育センターに行くのですが、その時の照明と皆の動きが音楽から引き離されたハロルドセンの苦悩を映し出していて、痛くもあり、ゾクゾクもしました。

「第二楽章」は小さな町の酒場での風景。最後にハロルドセンがウォッチャーによりひどい目に遭わされるまでは全体的にとても陽気で楽しい雰囲気でした。この話の中で一番の笑いどころもココだと思います。バーテンダー役の小多田さんとリンダ役のハラダさんの掛け合いも楽しいし、バーの客との絡みも面白い。そのギャップもあって、最後の部分で本当に言葉を失います。うわっ!と目を背けたくなるくらいツライ。

「第三楽章」は田舎のさとうきび畑付近での建設工事で働く人々の風景。「第二楽章」と同じく、全体的に陽気な雰囲気で、『音楽』が1番際立った場面でもありました。とにかく、歌。ミュージカルではないけれど、歌が楽しく、「音が聴こえるって良いなぁ」と思いました。最後がまたツライんですけどね。。

「喝采」は色んな感情が渦巻きました。正しいってなんだろう?とか、人生や運命なんかも頭をチラついたりして、ああ、この話は…と目に涙が浮かびました。儚いのかな?切ないのかな?いや、違うかな?

いずれにしても、ハロルドセンが求めていたものがそこにはあったのです。

 

少し重く影のある「陰」と朗らかで陽気な「陽」の対比が良く、それにより私の心が大きく揺さぶられ、ラストでグヘグヘ泣きました。いや、泣くって!これ。

ハロルドセンが話の中で作った「シュガーの歌」も耳馴染みが良く、会場を出て車に乗ってもまだ頭の中を「聞こえる 母の声♪」がずっとずっと巡ってました。

「シュガーの歌」を含むこの作品の多くの曲はSIBERIAN NEWSPAPERが手がけており、どれも心地良かったです。(シベニューは今年3月に活動を休止したんですよね。残念です)

 

観終わった後、涙を拭い「ふぅ」と静かに息を吐く。

席を立ち、一歩踏み出した時に、「明日、頑張ろうかな」となんとなく思えた。

そんな作品でした。

とても良かったです。

 


『無伴奏ソナタ』ダイジェストムービー - YouTube