バンビのあくび

適度にテキトーに生きたいと思っている平民のブログです。

ニッキ。

高速道路を走るバスの窓から流れていく景色を眺めていた。ビルがある街並みから徐々に住宅地へと移り、川を越えて田畑が見えてくると「あぁ・・」と思わず声を発していた。

 ここから先はしばらくの間、目立った建物はなく山やトンネルばかりが続く。お店や面白い建物を眺めるのが好きな私にとっては少しばかり退屈な時間がやってくる。まだまだ目的地は遠いし、しばらく寝ようと思った。幸いバスの揺れに身を任せているとだんだん眠たくなってきた。

 

 しばらく目を閉じていたが、ハッと目を覚ました。どれぐらいの時間が経ったのだろうと時計を確認してみると、たかだか30分ぐらいしか経過していなかった。
窓の外に目を向けてもまだそこは山ばかりだ。
隣に座っている息子を見るとどうやら眠っているらしい。
仕方なくまた顔を外に向けた。

 

すると、先ほどは気づかなかったのだが、木々がとても美しく見えた。光に照らされた木の緑は濃い部分と薄い部分があり、その濃淡具合が絶妙で風にそよいでいる葉はゆったりと動いていた。

そうか。新緑の季節か。

こないだまで桜が咲いていたと思ったのに、知らぬ間に時は過ぎていた。
季節の移ろいは自分を省みるきっかけを与えてくれる。良くも悪くも。

あまりに眩しい輝きだったので、顔を伏せた。そして揺れに任せてまた眠った。

次に起きた時はすでに街中の風景であった。
高いビルと少し曇った空気は私に安心感を与えた。なぜなら木々から感じとった眩しさをそこでは感じなかったからである。

安心感を得た自分はちっぽけだなと思った。

目的地に到着したのでバスを降り、雑踏に紛れ込んだ。ここで息を忍ばせれば誰にも見つからない。ここはそんな場所だ。

いらぬ安心感を胸に抱いたまま私は駅へ向かって一歩一歩進んで行った。