バンビのあくび

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ハイバイ『ヒッキー・カンクーントルネード』を観ました

 

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ハイバイ『ヒッキー・カンクーントルネード』を観ました。

ハイバイのホームページ

『ヒッキー・カンクーントルネード』はハイバイの代表作で何度も再演されています。今回は私が観に行った三重公演を皮切りに各地を回るようです。

(詳しくはこちらハイバイのホームページ | Blog Archive » 「ヒッキー・カンクーントルネード」2015ツアー

 

プロレスラーを夢見ているが自宅からは一切出られない引きこもり(ヒッキー)の登美男。妹の綾が唯一の理解者。ある日心配をした母が連れてきた「出張お兄さん」なるカウンセラーもどきの男、圭一に登美男は説得をされるが、あろうことか逆に圭一が、登美男と共に引きこもってしまう。続いてやってきたカウンセラーは、二人を家から外に出すべく、新たな策を練る。果たして、登美男は外に出られるのか。そして何故人は「外」に出た方が良いのか。

 以上があらすじです。

以下、ネタバレ含みます。

引きこもりである主人公、登美男は宅配業者に対応するだけでもまごついてしまうくらいの対人恐怖症なんですけど、これを克服するのは果たしてどうすれば良いのでしょう。ゆっくりその時が来るのを待つのか、荒療法で外部からの刺激を与えるのか。どちらが正しいのかはその人の性格によっても違うと思いますので一概には言えません。

この話はあらすじに書いてあるように、お母さんが「出張お兄さん」なる人を家に呼んできて、登美男と接触させます。これがですね、出張お兄さんの圭一と登美男とはウマがあうんですけど、圭一が居座るようになっちゃってとんだ大失敗なわけですよ。圭一は引きこもりとは逆の「飛びこもり」という症状らしく、どんな場所にも過剰適応して居座るんですって。いやぁ、これはこれでなんだか大変。

登美男は圭一のことをとっても気に入りまして、妹の綾に「圭一と付き合え」と言ってみたり、なんだかもうゴッタゴタ。そこに圭一を連れ戻しにきた黒木という女が現れるのです。この黒木、なんだかエラそう。この仕事を初めて3か月なのにベテランな雰囲気をプンプン醸し出しながらぐいぐいくるのがうざったい。

その黒木に対し、圭一を連れ戻されたくない登美男は「圭一は移籍して僕とタッグを組むんだ!」なんて言いだします。黒木は「そんなら移籍金を払え、こらぁ!」とせまってきまして、お金がない登美男はんぐぐっと顔を歪めるんですけど、そこで黒木はばばーんと交換条件を出したのです。

「代わりに買い物へ行ってくるなら良いよ」と。

引きこもりの登美男にとって一人での外出はサバイバル。だけど圭一は失いたくない。意を決して、登美男はリュックサックを背負い買い物へ出かけるのです。

さあ、無事に買い物を終えて帰宅した登美男は…ってなれば良かったんですけど、登美男は血だらけ、服がビリビリの状態で帰宅します。様子を見るために尾行をしていた黒木の話によるとこんなことになっていたのです。

買い物を終え電車に乗った登美男は、混雑した車内であったのにリュックを背負ったままだったため、隣にいた人に注意された→登美男は慌ててリュックを下ろそうとし、リュックの中身をぶちまけた→買ったもの、自分が好きなプロレス雑誌なんかを全部全部ぶちまけた→急いで拾いあげようとする登美男を手伝ってくれる人は誰ひとりおらず、どこかからクスクスと笑い声さえ聞こえた→呼吸も苦しくいっぱいいっぱいになってしまった登美男は前の座席に座っていた高校生のバッグに嘔吐した→激昂した高校生らに連れられボッコボコ

負の連鎖。意を決して外の世界へ飛び出した登美男に現実は果てしなく厳しかったのです。

そんな出来事があった次の日。近くの公園にみちのくプロレスがやってきます。妹の綾は「お兄ちゃん、みちのくプロレスが来てるのだって!行こう!」と登美男を誘います。プロレスが大好きな登美男なのですから間違いなく行きたいはずです。綾はなかなか外へ出ない登美男を置いて先に公園へ向かいます。

さて、この後、登美男は家を出ることが出来たのか?

出来なかったのか?

ここでこの舞台は幕を閉じます。

10年間引きこもっていた人が、意を決して外へ出たにもかかわらず、深い傷を負った。その翌日にまた家から飛び出そうと思えるのか?好きなもののために再チャレンジが出来るのかはかなりハードルが高いような気がします。私の気持ちとしては家から飛び出してほしいと願いますが、そう簡単に傷が癒えるものでもないよなぁとも思っています。

見終わった直後は「そこで終わっちゃうんだ」と思ってしまったのですが、帰りながら色んなケースを思い浮かべるようなお話でした。私の想像の中で様々な結末があるんですけど、きっとどれも正解でどれも不正解なんだと感じました。

そんな簡単なことじゃない。人の気持ちはむずかしい。

未だに母親目線ときょうだい目線、第三者の目線と色んな角度で考え続けています。

 

さて。ひきこもりについて、考える機会を与えてくれた「ヒッキー・カンクーントルネード」は題材が重たくならないようにたくさんの笑いも与えてくれます。

まず、お母さん役を男性が演じているのが良かったです。真面目なセリフもどこか可笑しくてわらってしまいました。それから妹の綾が「お母さんはいつもいなげやに行ってるじゃない」という場面があるのですが、三重県いなげやはないので反応が薄かったのが面白かったです。私は埼玉に住んでいる頃、よく行きましたよ!いなげやへ!

で、私が一番(心の中で)笑ったのは、登美男と圭一がプロレスラーの格好をしている際に、お母さんがマッチョな体の圭一へ向かって、「チョコボールかっ!」って言ったとこです。もちろん私が心の中で「向井かよっ!」とツッコんだのは言うまでもありませんね!ここ、声に出して笑ってるのが私が見るかぎり男性しかいませんでした。(気づいてしまった自分がイヤだ)

他にも笑いどころが随所に散りばめられているので、重たい→軽いの緩急を楽しみながらあっという間に時間が過ぎて行きます。

お近くで公演がある際には観に行かれたら良いと思いますよー。

そういえばどうでも良い情報ですけど登美男役の田村健太郎さんが細マッチョでした。それから妹役の岡田瑞葉さんがアホっぽくて可愛らしかったです。途中、着替えるんですけどその服が可愛かった。あの配色は好き。

そんなわけで観て良かったです!

 

 詳しい内容についてはこちらがわかりやすかったので読んでみて下さい。

今月の戯曲:岩井秀人『ヒッキー・カンクーントルネード』 | Performing Arts Network Japan

ハイバイ「ヒッキー・カンクーントルネード」 - ワンダーランド wonderland

 

『ヒッキー・カンクーントルネード』は小説にもなってますー。

 

 

ヒッキー・カンクーントルネード

ヒッキー・カンクーントルネード

 

 

 

 追記:

こんなわちゃもちゃした感想で良いものかとも思いましたが、岩井さんに読んで頂けたようでめちゃくちゃ嬉しかったです!今日は笑いながら眠ります☆