かがくのとも6月号『こんな こえが きこえてきました』を読みました。
ある交差点の11時10分の風景。
この中でどれほどの会話が飛び交い、どんなドラマが生まれているか、を考えることの出来る写真絵本です。
絵本のページのほとんどはこちらの交差点の写真です。
ページの右側に会話が書かれていて、その会話がここに写っている誰が発した言葉なのかを探って行きます。絵本ですので、もちろん音は聞こえません。言葉から得られるヒント、行動から想像できるヒントを頼りに探していきます。探し絵本が好きなこどもは多いですから、ぐんと前のめりになって「この人かな?」と探し始めると思います。
この絵本の面白い部分は探すことに留まらず、もっと奥行きと言うか、作者の意図していることにあります。
ざわざわした騒音の中で不意に、誰かが発した言葉を拾っていることはありませんか?
例えば、自分が好きな芸能人の話題であったり、仕事に関連した単語であったりと、普段「自分が気にかけている言葉」がぽーんと鮮明に自分の耳に届くのです。それは「カクテルパーティー現象」と呼ばれるものです。
絵本の中に書かれた会話は、そんな騒音の中からカクテルパーティー現象で拾った言葉なのです。
人混みの中の無意味に聞こえるザワザワも、無数の意味のある会話から成り立っていること、そして作者の言葉から引用しますが、
「複雑に見える現実も、実際は単純な要素が重なりあってできている」
それを再認識出来たことに喜びを感じました。あ、そうだった!みたいな感動ですね。
逆に、単純な事柄が「層」になって厚みを増したがために、見えなくなってしまった時。この事をほんの少し思い出せたら良いかなぁなんて思いました。
こどもでも大人でも楽しむことの出来る絵本だと思います。おすすめですー。
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作者の佐藤雅彦さんは皆様ご存知であろう「ピタゴラスイッチ」を企画・監修されている方です。もう、有名過ぎてご紹介するまでもありませんね。ユーフラテスは慶応義塾大佐藤雅彦研究室の卒業生からなるクリエイティブグループです。ピタゴラスイッチのピタゴラ装置を製作しているので、こちらも有名ですね。「あたまがコんガらガっち」も面白いですよ。
- 作者: 慶応義塾大学佐藤雅彦研究室,佐藤雅彦,中村至男
- 出版社/メーカー: 美術出版社
- 発売日: 2003/04/16
- メディア: 単行本
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