
子ども達が通う小学校では、登下校時に首から「赤い笛」をかけるように指導されている。
プラスチックで出来た「ピー!」と高い音が出る100円で買えるような赤い笛。
紐の部分を100均で売っているネックストラップに付け替えている子もたくさんいるが、息子は「売っているままの細く赤い紐の方が良い」とそれを好んで使っている。
赤い笛。
当然のことながら防犯の為である。
実際に何かが起きた時にどれほど役立つのかは定かではないが、それはそこに存在していることに意味があるのかも知れない。
少し前から息子が登下校だけではなく、外出時にも「赤い笛」を身につけるようになった。
「今日は休日なのに、赤い笛下げてるの?」
「うん。だって安全の為の笛なんだからしててもいいでしょ?」
「そうね。別にいいけど」
そんな感じで特に気にも留めていなかった。
先日、いじめの件で先生と話をした時にこんな事もあったと話してくれた。
「廊下のところに全員の『赤い笛』がかけられるフックがついているんですね。帰り際に『赤い笛、まだ持って行っていない子がいたら配ってあげてー』と言っていたのですが、いつも全部無くなるので、配ってもらったと思っていたんです。ですけど、後から他の子に聞いたらハルトくんだけいつも残っていたらしいんです…」
ハルトは自分の笛が残らないように、いつも慌てて取りに行っていたのだろうと想像出来た。
そして、もしかしたらそれが「休日でも赤い笛を身につけている理由」なのではないだろうかと考えてしまった。
自分の力で自分を守る。ほんの少しの自衛の気持ち。
1学期の最終日。
ハルトは通学団の団長で、いつも集合場所に遅れずに行くのだが、その日に限ってなかなか家から出てこなかった。
私は洗濯物を干していた手を止め、「もう時間だよー。どうしたの?」と声をかけると、
「笛がない。赤い笛がない」
と不安そうに焦りながら一生懸命、笛を探していた。
そして「笛がないと学校へ行けない」と言った。
私はどこにあるかハルトと一緒に考え、「あ、塾のバッグの中は見た?」と言って見た。
前日、塾に行く時も首から下げていたからだ。
2階にある自分の部屋へ慌てて行ったハルトは「あった!笛、あった!」と言った。
その後、手にした赤い笛を首からぶら下げ、いつものように「行って来ます!」と家から出て行った。
赤い笛。
それは今のハルトにとってはお守りのようなもの。
彼が赤い笛の存在を意識しなくても良いと思える日は来るのだろうか。
少しずつ。また共に進んで行きましょう。
※小さなカマキリが庭にたくさんいるんです。カマキリの卵、見たかったなぁ。。