誕生日には毎年、ぬいぐるみを買ってもらっていた。
昨年はウサギだったから今年はネズミ、次はクマ、またその次はネコ・・・といった感じに色んな動物のぬいぐるみを買ってもらっていた。
夜、布団を敷いて、まくらの位置を定めると、私はまくらの周りにそのぬいぐるみ達を次々と並べた。
「昨日はうさちゃんが隣だったから今日はクマちゃんが隣。ネズミさんは明日まで待っててね」
闇は私を不安にさせたから、仲良しのぬいぐるみを並べて少しでも安心感を得ようとしていたんだ。
たくさん並べたぬいぐるみは、朝になるとあちらこちらへ散らばっていた。
「一緒に寝てくれたのに。。なんだかごめんなさい」
少しの罪悪感を感じながら、散らばったぬいぐるみを集めてタンスの上に並べていた。
昼間はココがこの子達の居場所であった。
そんなぬいぐるみの中で私はブタのぬいぐるみをとても気に入っていた。
座った姿勢でベージュの服を着ており、しっぽは針金が入っていて″くるん″と一回転するジェットコースターのように曲がっていた。そして鼻を押すと「ブー♪」という高い音がなった。
購入時のタグに「ぺぺぶーといいます。なかよくしてね」と書いてあったので、私はそのまま「ぺぺぶー」と呼んでいた。
一時期は私の枕の横に来る回数が多かったぺぺぶーも、いつしかタンスの上が定位置となりその存在も薄れていった。
今日、私は実家に帰省した。
今、隣で娘が寝ているのだが、その腕の中にはぺぺぶーがいる。
「今日はぺぺぶーと寝るの」と娘は言い、ぺぺぶーの鼻をブー♪と押した後、満足そうに抱いて寝たのだ。
私があなたを忘れていても、捨てられることなくそこにいたから、また出会うことが出来たのだ。
娘のスースーと言う寝息を聞きながらほんの少しの幸せを感じた。