『ジェーンとキツネとわたし』を読みました。
仲間はずれにされている5年生のエレーヌは、
悪口を落書きされても、からかわれても、
いつも大好きな本『ジェーン・エア』を読んでやり過ごしていた。
あるとき、しぶしぶ参加した学校の合宿に青い目のジェラルディーヌがあらわれ、小さな変化が訪れる――。
いくつか書評を読ませて頂いてとっても読みたくなった本です。
図書館で借りてきたのですが、私は一般的な児童書サイズだと思い込んでいてなかなか見つけることができず大変でした。この本は大判絵本サイズで、絵本とも児童書とも漫画とも違うグラフィック・ノベルに分類されるようです。漫画のようにコマがあり、絵は絵本のような柔らかいタッチで文章量は児童書ぐらいです。絵本「スノーマン」にもう少し文章を増やしたカタチと言えばだいたい想像がつくかと思います。
読んでみて、これはグラフィック・ノベルであるからこそ素晴らしい作品に仕上がっているのではないかと思えました。
主人公、エレーヌは学校でいじめられています。エレーヌは通学のバスの中で本を読みます。「学校と家の片道で、ふつうはだいたい13ページ読める。」本です。その本の主人公がジェーンです。ジェーンの生い立ちは平坦ではありませんでしたが、ジェーンは自身を見失わない強い心を持っていました。エレーヌは本の中のジェーンと自分の姿を時には重ね、時には違いを心に刻みながら日々を送っていくのです。
タイトルの「ジェーンとキツネとわたし」はエレーヌが持っている本の主人公「ジェーン」と後半で登場する「キツネ」とエレーヌを指す「わたし」であることが読んでいくうちにわかってきます。
ストーリーの進行が興味深かったのですが、いじめられているエレーヌの場面は白と黒とセピア色の落ち着いたトーンなのに対し、本の中の話であるジェーンの場面はオレンジや水色も使われていて華やかなトーンになっています。これは読み手にどちらの場面であるかをわかりやすくしているとともに、エレーヌの心境も表しているように思いました。特にジェーンの話が華やかと言う訳ではないのですが、それでもエレーヌにとっては現実から逃れられるひとときの安らぎの時間であったのだろうと解釈できます。
終盤で現実の世界にもポツリと色がつき始め、それがエレーヌの心境の変化を物語っています。
いじめの話となると重たいイメージが付きまといますが、これは単なるいじめの話ではなく、孤独の中で生きていた少女が孤独の中での楽しさもみつけ、一歩踏み出した話なのだと思います。
殻の中で縮こまり、どんな景色を見ても同じようにしか見えなかった少女が、ほんの少し顔を上げ、あらためて眺めた景色がいつもとは違って見えた、そんな話なんだと思います。
私にも孤独に苛まれた日があったことをなんとなく思い出しました。
劇的な何かはなくとも、緩やかな時間に身を委ねているうちに、うっすらと明るい景色が見えることってあるのだと思います。
私がこの本を読み終えたとき、ワントーンぐらい景色が明るくなった気がしました。
もしかしたらただの気のせいかも知れません。
ですが、『ジェーンとキツネとわたし』は孤独を感じている心に柔らかく入り込んでくる本であるのは間違いないように思います。
大人も子どもの、すべての人の見る世界が少しだけ明るくなるように。
自信を持って「読んでほしい」と薦められる本だと思いました。

- 作者: ファニーブリット,イザベルアルスノー,Fanny Britt,Isabelle Arsenault,河野万里子
- 出版社/メーカー: 西村書店
- 発売日: 2015/06/20
- メディア: 大型本
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主人公、エレーヌが読んでいる本は『ジェーン・エア』です。