前略、お元気ですか?
毎年、夏になるとあなたを思い出します。
なぜ?ってそれはあなたが「夏生まれ」だからです。
「夏」という季節はあなたに限らず、なぜか色んな人を思い出します。
小学生の時に一緒に虫取りをしたあの子も、中学生の時に蚊に刺された腕をポリポリ掻きながらグダグダ無駄話をしながら歩いたあの子も、「フェスには派手な柄の布が役立つ!」とか何とか言って民族っぽい綺麗な色の布を巻きつけ、走り回ってたあの子も、みんなみんな思い出します。
夏ってズルいですね。
ぴっかぴっかに輝いて華やかですもの。
私、10月生まれなので季節で言えば「秋」なんですけど、秋になったから私を思い出すと言うのはないと思います。
なぜ?って「秋」は気持ちが外よりも内、自分自身へ向くじゃないですか。
食欲も、読書も、芸術も、物思いに耽るのも、どちらかと言えば「外側ではなく内側」へ向いていると思うのです。
自己を高めたり、充実させたり、省みたり。
秋はそんな季節だと思うのです。
これは、夏の反動でもあるのではないでしょうか。
やっぱり夏ってズルいですね。
あれだけ賑やかだった蝉の声もだいぶ少なくなりました。
ツクツクボウシだけが夏の終わりを告げるように必死にしがみついて鳴いています。
蝉の抜け殻、今年はいくつ見つけられましたか?
殻から這い出た蝉は成虫後、約1週間の生命と言われていますが実はもう少し長生きだそうですね。
蝉は飼育には不向きですぐに死んでしまうため、このような俗説が生まれたのだとか。
自然界で伸び伸び生きようとしている物を囲ってはいけないと言うことなのだと私は思います。
「抜け殻」で思い出しましたが、昔「夏のぬけがら」と言うCDを良く聴きました。
今、夏から抜け出そうとしている私は、蝉のように懸命に生きられるでしょうか。
いや…ごめんなさい。違いますね。
脱皮をするのですから、また前を向き歩んで行くしかないんですよね。前進あるのみです。
夏と秋が交じり合う空気の中。
今だったら私を思い出してくれるかも知れませんね。
思い出さなくても、あなたがまた前進してくれるならそれで良いとも思っているんです。
しゅわしゅわと弾け飛んだ夏でしたが、また、いつかの夏にお会いしましょう。
それまでお元気で。
草々。