バンビのあくび

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名松線に乗って伊勢奥津駅まで行ってきました ~素敵な古民家カフェがありました

2016年3月26日。日本全国が北海道新幹線の開通に沸く中、三重では新幹線ではなくローカル線である名松線が全線復旧し、運転が再開されたことでにぎわいを見せていた。

名松線は2004年に台風による土砂災害で全線不通となった。元々、利用者が少なかったこともあり、廃止が懸念された。それが、様々な人の声と力で全線開通したことはとても喜ばしいことであった。被災から6年5か月かかっての再開(一部区間)は日本記録らしい。

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 名松線が開通したのを聞いてから、私はいつか乗ってみたいと思っていた。そしてとうとう、その時がやってきたのである。

8月某日。私は松阪駅から名松線に乗った。車内は地元の人、夏休みを楽しむかのような親子連れ、そして電車マニアの方もいらっしゃった。ボックス席に腰かけ、窓の外を眺めていると向かい側に化粧箱に入ったぶどうを下げているおじさんが座った。

名松線の旅は穏やかにスタートした。

名松線はいくつかの駅を通り過ぎるまで思ったより町中を走っていた。遠くにイオンの看板が見えたり、ドラッグストアも見えたりした。線路わきには家も立ち並んでいた。ほとんどの駅が無人駅のため、駅に停車するたびに切符を回収するための小さな青いポストが目に入ってきた。綺麗な青だった。次第に景色は田畑や草原、川に変っていた。青い稲が揺れる様を眺めるのに、セイタカアワダチソウは少々邪魔だと思った。山の脇を通り過ぎる時はシダや苔を眺めていた。川の脇を通り過ぎた時は川遊びしている子供たちに手を振った。一日に数本しか走らない電車は外から眺める人にとっても貴重なのかも知れない。

 

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やがて電車は、終点である伊勢奥津駅へ到着した。

駅にレンタサイクルがあるとの張り紙がしてあったので、駅を出て左手側にあるNPO法人で電動アシスト付自転車を借りた。

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山道ばかりなので電動アシスト付自転車でないとしんどいのだそうだ。自転車を借りてはみたものの、特に目的地もないため、こちらに貼ってあった古民家カフェへ向かうことにした。おじさんに場所を尋ねると、ここを出て左に曲がって左に曲がってまっすぐ進めばあるとのことだった。

スイッチをオンにしていざ出発。自転車に乗る際に久しぶりにおばちゃん乗りを試みた。左のペダルに片足を乗せて助走をつけてぽんとまたがる。何年もこの乗り方を試していなかったが、もう体に染みついているのでなんの問題もなくクリアしてしまったのがなんだか可笑しかった。夏の日差しは山合でも容赦はなく、ペダルをこぐたびに汗が噴き出してきた。おじさんの説明通り、左に曲がって左に曲がってみたものの、行けども行けども古民家カフェは見当たらなかった。「元々、目的地なんてなかったのだから」と純粋にサイクリングを楽しむべく、またペダルをこぎ始めた。川にかかる橋を走っていたら「これはポカリスエットのCMか?それともカルピスか?」というぐらい爽やかだった。流れる水の音、光る水面、照りつける太陽、どこまでも深く青い木々。自転車のタイヤが回る音、蝉の声。これを夏と言わずして何を夏とするのだろうと思った。

山と川の間にある道を駅の方向へ進んでいく。周りは古民家だらけであったが、その中でも素敵だと思う建物があった。それが、行こうと思っていた古民家カフェだった。

古民家カフェ『葉流乃音(はるのん)』は6月にオープンしたばかりのお店だった。店内は様々な椅子が置いてあり、どの椅子に座ろうか迷ってしまった。

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とっても暑かったので、アイスコーヒーを頼んだ。それと吉野葛で作る葛餅もお願いした。オーダーしたものがくるまで、奥にあった本棚の本を眺めていた。本棚は持ち主の個性が現れていて面白いと思う。新見南吉や椋鳩十の本もあって、このお店にしっくりあっているような気がした。葛餅がテーブルに運ばれてきてもしばらく本棚を眺めていたら、「葛餅、温かいうちに召し上がってください」とお店の方が笑顔でおっしゃった。あらあら、これは申し訳ないと慌てて席につき、葛餅を頂いた。葛餅は口の中に入れるとほのかに温かかった。葛餅といえば、一般的には黄な粉をまぶして黒蜜をかけると思うのだが、こちらでは黒蜜ではなくメープルシロップが添えられていた。葛餅と黄な粉とメープルシロップは甘すぎなくて大変美味しかった。

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 店内には様々な椅子が置かれていたが、照明もそれぞれ違っていて眺めているだけでも楽しかった。明かりによって壁に映しだした影はさらに私を落ち着かせてくれた。喧騒から離れた場所で静かなひとときを過ごすことは贅沢極まりない。

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今回は名松線に乗ることが一番の目的だったため、何もプランを考えていなかったが、次はこの古民家カフェに来るために名松線に乗るのも良いなって思えた。

 

季節を変えてまた来よう。

山は季節によって顔を変える。

もっと涼しくなったら、自転車でもっともっと遠くまで行ってみたいと私は思ったのだ。

 

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