元々、料理はまったく興味がなかった。
母が料理をするのはもちろんのこと、祖母もいたし、父も料理が上手だったため、まったく料理をする必要がなかった。リンゴや梨を剥くのに包丁を持つ程度って感じ。
栄養科に行ったのも料理が好きだからではなく、栄養に興味があったから。だから調理実習はけっこう苦労した。
ちゃんと料理ができるような手つきになったのは働き始めてからだ。給食調理は子どもと大人を合わせれば100人分を超えていた。キャベツの千切りだって丸々1個は余裕でする。それを毎日繰り返すうちになんとか形になってきた。
とりあえず食材は問題なく切れるようになったので次は味付けだ。学校でも習ってはいたが、わりと本格的なものが多く、日常的に作る料理としてはあまり向かないものだった。
そんな時、本屋でこの本をみつけた。
本屋さんに料理の本はたくさんあったけれど、これが一番私の身の丈にあっている気がした。
基本を押さえながら毎日の献立に困らないぐらいのレシピの数。ほんのちょっぴり「ああ、なるほど」と思うような工夫も書いてあって何度も何度も読んだ。
コロッケに練乳を隠し味で入れる良いと書いてあり、その通りに作ってみたら美味しかった。たたきごぼうも炒り豆腐も美味しく出来た。他の料理本も読んだりしたが、やはりこの本が一番好きだ。
カツ代さんはきっと家族のために料理をしていたんだなってそう思えた。
今は何も見なくても普通に料理が作れるようになった。
でもふと、「カツ代さんはなんて言ってたかな?」とこの本をパラパラめくる時がある。
料理には愛情がある。愛情のない料理ほど美味しくないものはない。オシャレじゃなくてもいい。私は食べてくれる人がホッとできるような家庭料理が作りたいのだ。
カツ代さん、私はまたこの本を読んで家族のために料理を作ります。だからそっと眺めていて下さい。練乳はほんのちょっぴりの隠し味にしますから。
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