バンビのあくび

適度にテキトーに生きたいと思っている平民のブログです。

夜の空気に触れながら

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 会社の忘年会があった。
皆は会社から車を乗り合わせて来る予定で、私は家の事を諸々すませてから単独でお店へ向かった。車を駐車場に止め、会社のおねーさんに「あとどれぐらいで着きそう?」と電話をしたら「ごめん。色々あって1時間ぐらいかかるかも…」と言われた。
1時間か…と思いながら、道路脇にあったベンチに腰掛けて本を読んだ。空気がひんやりと冷たくて少しずつマフラーに顔をうずめていった。信号が変わるたび、車と人が行き交う交差点。塾へ向かうであろう中学生ぐらいの男の子、金曜日の仕事を終え開放的になったのか大きな声で喋りながら歩くサラリーマン。重たそうな荷物を抱えた中年の女性。
本を読むために視線を下に落としているにも関わらず、人の動きを見たいがため、いちいち顔を上げて付近見渡した。そしてそこに30分もいるとさすがに寒くなってきたので、本を閉じふらふらと歩き始めた。
駅近くの商店街は昼に訪れることがあっても、夜に来ることがなかったのでなんだか知らない街のようであった。ああ、こんなに飲み屋があったのかとか人もこんなにいるのかとか不思議で楽しかった。
まっすぐ歩いていたら、公園にたどり着いた。木々がライトアップされていてとても明るかった。眩しかった。けれど、そのイルミネーションを見てもあまり心が揺れなかった。明るいなぁとは思ったけれど、綺麗だとは思わなかった。私の心が乱れていたのか、それとも人工的な光だから惹かれなかったのかはわからなかった。
踵を返し、商店街を歩いた。客引きの男性、唐揚げ屋に集まる学生風の若者、美容室から出てきた良い匂いを振りまく女性。日常を生きる人々が眩しいと思った。
 
横断歩道を渡り、お店へ向かった。中へ入るとほわっと暖かかった。皆はまだ来ていなかったので、イスに座って本を取り出そうとした時に「遅くなってごめーん」と会社のおねーさんがドアを開けながら言った。相変わらずの勢いだなと心の中でうひゃひゃと笑いながら皆とエレベーターに乗り予約してある部屋へ向かった。
 
乾杯の後、ひたすらカニを食べた。カニ、カニ、カニ。お腹いっぱい。
 
帰る時に隣の部屋にいた団体と一緒になってしまいわっさわっさとなった。おねーさんが靴を履くのに手間取っていると「ここに、マダムがいるから邪魔しないようにねー」と隣の団体にいたお兄さんが言ったもんだから「マダムやないわ!おねーさんやわ!!」と酔っ払ったおねーさんが噛み付いてた。「あ、おねー様、すみません!」と言わせてたのを見てさすがや!と思った。けど、本当は酔っ払ってなくてもそんな勢いのあるおねーさんなんですよ!とお兄さんに教えてあげたかった。言わないけど。そこはやめたけど。
 
お店の前でみんなと別れた。
背を向けながら手をひらひら振った。
 
ケンケンパ。そんな風にふわっと軽やかに歩いていたらなんだか気持ちが良かった。
 
車に乗って義母の家にいた娘を迎えに行った。息子は泊まるんだってさ。
娘に「はい、これ」とカニの太巻き寿司を渡したら大事そうに抱えて「明日食べる」と言った。
車の中でもずっと抱えていて家に着いたらすぐに冷蔵庫へしまってた。
昨日、お風呂で泣いてた娘は今日はにこにこしながらお風呂に入った。
 
温まった心と体を横たえて、娘は静かに寝入っていった。
 
私は「3月のライオン」を読みながらコーヒーを飲んだ。
そしたらいつの間にかこんな時間になっちゃった。
夜は静かだ。静かな夜はもう少し起きていたいと思うからどうにも困ってしまうのだ。