バンビのあくび

適度にテキトーに生きたいと思っている平民のブログです。

寺地はるなさんの『ビオレタ』を読みました

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寺地はるなさんの『ビオレタ』を読んだ。

 

婚約者から突然別れを告げられた田中妙は、道端で大泣きしていたところを拾ってくれた菫さんが営む雑貨屋「ビオレタ」で働くことになる。そこは「棺桶」なる美しい箱を売る、少々風変わりな店。何事にも自信を持てなかった妙だが、ビオレタでの出会いを通し、少しずつ変わりはじめる。

 

素敵な物語であった。

主人公「妙」を含め、風変わりな人が多く出てくるが、みんな愛らしかった。妙に別れを告げた慎一への苛立ちはあるものの、結局そういうことだったのだ。誰もが少しずつ埋葬したい何かを持ち、棺桶につめていく。嬉しいことも悲しいことも。

菫さん、千歳さん、連太郎くん…それぞれ表現方法は異なるけれど、思いを汲める人達なんだと思う。また、妙は自分を蔑んでばかりいるが、素敵な人だと感じた(少々思い込みが激しいが)

思っていることが顔に出てしまう妙のように、私は顔を百面相のように変化させながら読んだ。感情が様々な方向へ揺れ、表情筋が鍛えられたような気がする。ほんの少し顔が疲れたが、心はそれ以上に軽やかだ。

誰かに託すのではなく、自分の足で歩いていく。

その過程で「庭になりたい」と思えたなら、出会いと自己の成長を振り返り、「私ってそこそこ幸せじゃない。ウフフ♡」ぐらい言ってもいいんだ!とこぶしを強く握りしめながら思ったのです。

 

ビオレタ (一般書)

ビオレタ (一般書)

 

 

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いつもブログを拝見させて頂いているはるなさんが、ポプラ社小説新人賞を受賞された。それを知らされた時、自分のことではないのにとても嬉しかった。おそらく、はるなさんのブログを読まれていた方、みんながそう感じたのではないかと私は思っている。日常の風景はさりげなく過ぎ去っていくものが大半で、心に引っかかってくれる物事は僅かしかない。過ぎ去った大半の中にもドラマはあり、それを切り取り、表現してくれたのがはるなさんの文章であった。時にハッとし、笑い、心をグッとつかまれ、「生きてるってなかなか良いよね。へへんっ!」って思えたのだ。

『ビオレタ』では私が感じてきたはるなさんの温かさとユーモアセンスが、所々に散りばめられ輝いていた。読み進めながら、阿呆みたいに「すごい!すごい!」と発していたため、娘に「お母さん、どしたん?」みたいな顔で見られた。 

「だってね、すごいと思ってはいたけれど、『やっぱりすごかった』って認めちゃう時あるじゃない?今、それを感じているの」

「ああ、ある、ある。そういうのあるよね」

7歳の娘が何処までわかっているのかと末恐ろしく感じる相槌だった。 

「余白は大切」「必要とされていないのがつらい」そんな言葉達に大きく頷き「アビャン」「モギャン」の表現に、はるなさんだっ!とケタケタ笑った。 

「松竹梅で言ったら蓼です」ってすごい。なに、これ?私も「蓼」と答えたい!

ものすごく個人的な感想としては千歳さんが「響きがかわいい言葉」として「あくび」を挙げた場面が嬉しかった。だって、私のブログ名は「バンビのあくび」ですから…!ほら、かわいい!つまり、ワタシ、カワイイ☆(大きな勘違い)

それから「ぐりとぐら」が出てきたのも嬉しかった。絵本が大好きなため、小説の中に絵本が出てくると前のめりになってしまう。この癖は一生治りそうにない。

と、まあ、そんな感じの、まとまりのない感想ではあるが、絵本好きとしては最後にこちらの絵本を千歳さんにおくりたい。

『はんぶんちょうだい』

うさぎとさるが海に魚釣りに行くおはなし。

「さかながつれたら はんぶんちょうだい」

「あげるあげる はんぶんあげる」

このやりとりを繰り返し、最終的には海を釣り上げ、くるっと丸めて山へ持って帰ってしまうのだ。海を丸めちゃうのか!とはじめて読んだ時は驚いたが、千歳さんは理解して下さるのではないだろうか?

……なんてね(笑)

 

はんぶんちょうだい

はんぶんちょうだい

 

 

 

『ビオレタ』は気持ちの良い物語でしたので、ぜひ、ぜひ読んでみて下さい。

軽やかな風が吹き抜けると思いますよ☆

 

 

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素敵すぎてウハウハしちゃう寺地はるなさんのブログはこちらです。モヌモヌします!

悩みは特にありません。