バンビのあくび

適度にテキトーに生きたいと思っている平民のブログです。

バレーボールをしていました~ママさんバレー編「さくらクラブ」の巻 その2

 こんにちは。

昨日に引き続き「バレーボールをしていました」シリーズを書きました。

長いね。さすがにあと数回で終わる予定ですけどね。。

前回の記事はこちらです。 

バレーボールをしていました~ママさんバレー編「さくらクラブ」の巻 その1 - バンビのあくび

 

小学生の私から追っていきたいよ!という方はこちらのカテゴリをどうぞ。 

bambi-eco1020.hatenablog.com

 

***

さくらクラブはキャプテンが田中さん、セッターはジュンのお母さんであるハナさん、レフトがジュン、チカやマミはレシーバーであった。

「どこのポジションがやりたい?」
田中さんに聞かれ、私は迷うことなく「ライトです」と答えた。元々あるチームに後から入っていくので、要望が通らないこともあると思うのだが、田中さんは私をライトへ置いてくれた。
 
全体的にみて年齢の部分だけではなく、技術面においてもゆりクラブより上なのはすぐにわかった。聞いたところによると、レベルによってブロック分けされる市内の大会で、A.B.Cの中の「B」ブロックに属しているとのことだった。田中さんはこのチームをAに上げたいと仰った。
Aに上げたいのは田中さんの志の高さとプライドだと思った。田中さんは以前にAブロックに属しているチームでプレーをしていたらしいのだが、そこでいざこざがあり、自分で新しいチームを立ち上げたのだと他の方からこっそり聞いたからだ。ママさんバレー界で人間関係がもつれて新規チームが出来ることは往々にしてあるとのことだった。
 
何回か練習に顔を出すうちに、時々、田中さんの気持ちが空回りしている気がした。その光景は私が中学生の頃に見た景色と重なって見える一瞬があった。「ひたすら強くなりたい人」と「楽しくやりたい人」の間にある溝が見えたのだ。ただ、ここは思春期の子が集っているのではないので、その溝を上手く消している縁の下の力持ち、タエさんがいた。タエさんは目立たない存在ではあるが、温和で、けれど熱い気持ちを内に秘めているムードメーカーだった。タエさんのような方はなくてはならない存在であると私はこの時、強く思ったのだ。
 
ある日、「さくらクラブの練習を指導したい」というシンジが現れた。シンジは田中先輩の男子バレーボールチームに所属しており、「自分にとってもプラスになるから」とさくらクラブの指導をかって出たとのことだった。年齢は私と一緒で、背はあまり高くない。技術面においても上手いとは言い切れなかったが、基本的な部分の指導と馴れ合いにならないような客観的意見があるのは悪くないと思った。
(これは私の想像でしかないのだが、シンジはチカに好意があるから来てたのだと思っている。チカはまったく相手にしていなかったのがアレだけど)
 
シンジは自分自身がレシーバーであったので、そちらの指導は的確であり、皆も少し上達したように感じた。それからシンジは私やジュンのアタッカーにただ打つだけではなく、ブロックアウト(スパイクを打った際にブロックの手の端などに当ててからアウトにする行為。つまりスパイクを打った側の得点になる)を練習しようと言い出した。
 
「すみません。私、ブロックアウトは出来るので他の打ち方練習しますね」
私はさらに向上するための打ち方を練習したかったのでシンジに従わず、練習を始めようとした。
すると、シンジはカチンときたらしく、「それでも確率を上げるためにブロックアウトの練習をしたらいいじゃん?」不機嫌そうに言った。
ああ、機嫌を損ねちゃったのかな。もう少し違う言い方にすれば良かったかな。
場の空気が淀んでもいけないので、「それならブロックアウトの練習しますよ」と私は言った。気持ちは他の練習がしたかったので、ややぶっきらぼうな言い方になっていた。
シンジは折りたたみ椅子を頭上に持ち上げた。
殴る…ではなく、折りたたみ椅子をブロックに見立てるために高く持ち上げたのだ。
最初にジュンが練習を始めた。ジュンのスパイクはレフトらしい力強いスパイクであった。だが、コースの打ち分けは苦手とみえて、何度も折りたたみ椅子のブロックに捕まり、上手くブロックアウトが出来なかった。シンジは「ほらね。だから練習が必要でしょ?」みたいな表情をしながら、「次はえこちゃんの番だよ」と言った。
ブロックアウトが出来ると自分で言った手前、ミスは許されないような気がした。目の前でことごとく椅子のブロックにはじき返されたジュンを見たため、やや緊張したものの、本来の負けず嫌いな私がむくむくと出てきていた。
田中さんがポーンと投げたボールをハナさんが私にトスしてくれる。弓なりに上がったボールに合わせ、私は足を踏み切りジャンプした。手がボールを捕らえる瞬間、視線の先にあった椅子の右上を狙った。
ボールは椅子の端に当たった後、アウトラインの外へ落ち、てん、てん、と転がっていた。
良かった。ちゃんと一発でブロックアウトが出来た。私は内心ホッとしていた。
シンジはそれを見て、一瞬目を見開いたが、「まあ、連続して出来ないとね。確率あげないとだから」と言った。
これには正直カチンときた。
ポニーテールにしていたゴムをキュッと結びなおし、目を1度瞑ってからキッと前をにらみつけた。
 
わたし、本気モードに突入シマシタッ!
 
先ほどと同じように、田中さんがボールを投げ、ハナさんがトスをあげた。
私は踏み切り、ジャンプをし、ボールを手に当て、椅子の端を狙った。
落ちたボールは先ほどと同じように椅子に当たってから、アウトラインの外へ落ちた。
 
この後、さらに3回、計5回やったのだが、すべてブロックアウトになったため、シンジはさすがに何も言わなかった。
 
「だから、ブロックアウト出来るって言ったじゃないですか」
 
内心はかなりホッとしながらも、こういうことを言ってしまう私は可愛げがないよなぁと思った。
 
練習を終え、夜風に吹かれながら自転車に乗った。
可愛げのない自分が心のどこかに引っかかり、穴があったら入りたい気分だった。
 
「ねぇ、先輩、聞いてます?だから彼氏が会ってくれないんですよ」
私の横にいたマミが彼氏への不満をずっとしゃべり続けていた。
 
20代前半だった私達には、この頃にしかわからない不安や心に溜まった澱がたくさんたくさんあったのだ。
 
 
 
次回。さくらクラブは試合に挑みます!
お楽しみに☆
 

 

 

 

ハイキュー!! 16 (ジャンプコミックス)

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