寒さが身に染みるような季節の入り口に立ったようだ。
いまさらではないか。もう十分寒くなっていたではないか。そんなふうに思われるかもしれないが、こないだ夜の名古屋を歩いたとき、「あ、さむい」と実感したのだ。肌で感じる空気がひんやりして冷たいと思ったのだ。
私の日常はほぼ車で移動し、車の外へ出たとしてもお店か家の中といった感じで、しばらく夜の空気に触れながら街を歩くという行為をしていなかった。名古屋で夜の冷たさを感じたとき、同時にほんのちょっとの危機感が私を襲った。自分の足で歩かず、周囲を見渡す行為を怠っていると、すべての感覚が少しずつ鈍くなると感じたからだ。
車は便利でどこへ行くにもすいすい行けるし、暖房だってついてるし、雨にも濡れない。田舎住まいだと車はなくてはならないものだけど、慣れすぎちゃいけないんだ。時には土の上を踏み歩き、泥くささと草のにおいを嗅ぎ、澄んだ風に吹かれなくちゃいけない。
洗濯物を干す、ささいな時間が唯一の空気と触れ合う時間であったが、ここ数日は朝のバタバタに巻き込まれてまったく余裕がなかった。
夜。勝手口から外へ出てみると、頬にあたる空気はひんやり冷たかった。
だが、夜空に輝く無数の星を眺めることができた。
星が美しい季節ですね。
若い人々のにぎやかな仮装をみて、あれって若いうちだから楽しいんだよなって思った。若いうちしかできないこと。若いから勢いでできること。私にそのような勢いがあったのはだいぶ昔のことであるけれど、数年前に約束した青春ごっこの話は忘れてないんだ。何をするかっていると、ズボンが濡れることも気にせずに海の中へ入っていってパチャパチャ水をかけ合うっていう青春遊び。
馬鹿みたいだけど、光に照らされ、キラキラ光り輝く海のしぶきを思い浮かべるだけで、なんだかわくわくするのだ。
先ほど突然、その約束を思い出しちゃったけれど、ちょっと今は水が冷たすぎるし、冬の海に勢いよく入っていく姿が想像出来ないからやめておいた方がいいなって思った。
暖かい季節がやってきて、私もあなたもその約束を思い出せたなら、星が輝くような水の玉を弾かせてお互いにかけ合いましょう。
私はきっと手を抜きませんよ。
だから覚悟しといて。