気持ちが不安定な時はひとつひとつのことを丁寧にすると落ち着く。
朝、早めに起きて珈琲を入れ本を読む。珈琲の香りを感じながらページをめくる。
洗濯機が鳴ったら洗濯物を干す。
掃除も慌てず丁寧に。
絵本屋さんへ足を運んだ。
私がよく行く絵本屋さんは「いらっしゃい」ではなく「こんにちは」と挨拶するので先に「こんにちは」と声をかければもう空気に馴染む。本を買うときも店員さんと言葉を交わして微笑みあう。
花屋さんでお花を選んだら「私、お花に詳しくないんですけど、この花はなんという名前ですか?」と尋ねる。
「ピンクッションって言うんです。ほら、裁縫の針を刺すクッションに似てるでしょう」
ああ、本当だと思い、お礼を行ってお店をあとにする。
横断歩道に自転車の人がいたらゆっくり止まる。後ろの車から舌打ちが聞こえてきそうでも気にしない。
家で花を飾り本を読む。
雨の音が大きくなったり小さくなったりする。どこかで赤ん坊の泣き声がする。カエルが鳴いている。
自分の呼吸が聞こえそうなくらい静かに穏やかにする。
手の力は抜けっぱなしでなんとなく震えているような気がする。
そういえば、何年か前に不安になったとき、ボールペンで字が書けなかったのを思い出した。持つことはできるけれど、力が入らないために文字が書けなくてびっくりしたんだった。怖くなって慌てて文字を書いてみたらなんとか書けたのでほっとした。
自分が慌てたことがなんとなく可笑しかった。
雨は強くなりざあざあ降っている。
心は幻想と現実を行ったり来たりしている。