ベランダに出て洗濯物を干していたとき、用水路から水音が聞こえてきた。田んぼに水が引かれると、用水路がにぎやかになる。
今の住まいに越してきて、その規則的な音に何度救われただろうか。
人によっては煩く感じるその音は、私がどれだけ不安を抱えて泣いたとしても、時が流れていくことを教えてくれたのだった。
今年に入ってから、新体制となった会社で自分がすべきことを模索してきた。経験が長いことで、私がやらなければと気負い、抱えるものが多くなってしまった。今月に入ってから、私がしている仕事の多さに気がつかれた方がいた。
「そんなに抱えなくても大丈夫よ。一緒にやるからね」
今日はそんなことを言ってくれて、泣かせにきているのかと思った。
今年に入って7㎏体重が減ったけれど、それより心が軽くなった気がした。
私はずっと誰かにことばをかけてほしかったのかもしれない。
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家の近くにあった喫茶店が閉店してから半年ぐらい経ったのだが、最近、そこの駐車場でわりと派手めなキッチンカーを見かけるようになった。お店が始まるのは夕方で、娘を塾へ送って行く際、暗闇の中でピカッと光るキッチンカーはなんだか異国を思わせた。陽気そうな女性が行き交う車にぶんぶん手を振っている。
田舎にぽっかり外国がやってきた、不思議でユーモラスな雰囲気がたまらなくて、なんとなく楽しくて、なんとなく泣きそうになった。