いろんなことが空回りしていて、疲弊するばかりでなにも進まなかった。ただ家へ向かって帰るだけのことも気が重たかったので途中で公園へ寄り道をした。
ゆっくりと歩いただけだ。
生えている植物と歩いている人と光と空を眺めただけだ。
だけどそれだけで少しだけ私は軽くなった。
小さな花が咲いていると思ったら、桜がそのまま落ちていた。
花びらじゃなくて花のまま落ちることもあるのだと知った。
公園のいろんな場所に人がいて、みんなは何を見ているのだろうと思った。
男の子の視線の先には女の子がいて、それはそれで春っぽいなって勝手に感じてた。
なんにも考えずに歩きたいときもある。心の中がガラクタだらけになるとなおさらだ。
立ち止まっている人はほんのひとときの安らぎが欲しかったのかもしれないし、晩ご飯のおかずを考えているのかも知れない。日が沈む前のわずかな時間は忙しくもありゆるやかでもある。
私が桜を撮ろうと思ったのは、「忙しくて今年はゆっくり桜も見られない」とキミが話してくれたからだ。
実際に眺めることに比べたらなんてことない写真だけれど、キミが知っている私が眺めた景色だと思えば少しだけ色づいて見えるのではないだろうか。
独りよがりかも知れないけれど、私はそうしたかったのだ。
いつか、一緒に桜を見に行きましょう。