いつも駐車場に行くのに、最短距離だからという理由で低い生垣のあいだを通っている。最近、そこにくもの巣ができるようになった。おいおい、ちょいと、くもさん?そこは私の道なんですけども?と話しかけてみるもくもからの返事はなかった。
しばし考えたのち、私は足を振り上げてくもの巣めがけ、踵落としをお見舞いした。くもの巣は壊れ、私が通れる道ができた。
「へへっ、またかかってこい」
歩きながら声に出して言ってみたがくもからの返事はなかった。
バタン。
車のドアを開けて乗り込んだ時に私はスカートであることを思い出した。
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新宮晋さんの「くも」が大好きである。
オニグモの習性を描いた絵本なのだが、文字はほとんどない。
クモが網をはっていく様が繊細に描かれており、トレーシングペーパーの効果もあってとても美しい。
クモの巣をこわしてしまう前にクモの巣をじっと見てしまうのはこの絵本の影響だと思っている。