観たいと思っていた『はちどり』が伊勢の進富座で公開されていることを知り、車を走らせ行ってきた。
14歳のウニが主人公であるこの映画は、忘れかけていた思春期の葛藤、揺れ、和らぎなどの感情をぶわっと思い出させる作品だった。なぜこんなにロープを渡るかのように危ういのだろうと思うけれど、人は次のステージへ向かう時は思春期でなくとも危ういものなのだ。
不安を誰かにぶつけることもあるかも知れない。取り返しのつかないことをすることもあるかも知れない。それでも、はちどりのように羽をパタパタと羽ばたかせ、生きていこうとする少女の姿に励まされた。頬を伝う涙がマスクを湿らせた。それでも私は動くことが出来なかった。
伊勢に来たので古本屋ぽらんにも寄ってみることにした。せっかくなので、勢田川沿いを歩いてみた。毎年、河崎の一箱古本市が行われる場所なのだが、今年はすでに中止と告知されている。
秋の勢田川沿いは気持ちが良い。静けさにひたっていたら、川の魚がぽちゃんと跳び跳ねた。
車が通ることのできない歩道横に設置されたポストは1日にどれだけの手紙が投函されるのだろうか。
今年も会えましたね、元気でやっとりましたか?
ついつい、心の中で挨拶をしてしまう。
ぽらんで、雨宮まみさんの『東京を生きる』を購入した。ここのところ、立て続けに自死のニュースがあったことと、元々雨宮まみさんのエッセイが好きだったことが絡み合って、棚にあったこの本をみた瞬間に手にしていた。
タイミングは大事なのかもしれない。
伊勢を後にし、津の奥山銘木店へ行った。行こうと思いつつ、いつも忘れていたのだけれど今日は忘れなかった。裁判所の前を歩くとき、まだ緊張してしまう自分に気づいた。
早足で歩けば、なんとかなる!
次はスキップが良いかもしれない、などと思いながら、前だけを見つめて歩いた。
奥山銘木店で荒井良二さんの『こどもたちはまっている』を購入した。「この絵本は手にとってから購入したい」と思っていたのに、発売してから出会えずにいたのだ。荒井良二さんは有名な絵本作家なのですぐに出会えると軽く考えていたが、これがなかなか……だった。おそらく、亜紀書房の絵本を置いている本屋さんが少ないからだろう。何はともあれ、出会えて良かった。奥山銘木店が楽しくて、長い時間一人きりの時間を過ごした。店主に「素敵な本屋さんと聞いていましたが、本当に素敵でした!」と伝えた。
以前からもしていたが、最近特に素敵な店に行ったときは、その思いをできるだけ伝えるようにしている。店だけでなく、丁寧な対応をして下さった方にも伝えている。
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今、私が何処にいるのか、自分で探すことができない状況にいる。
一度、立ち止まり、心を整えること。
感情があることは素晴らしいと思えること。
人の温かさに触れること。
自然の輝きが美しいと思えること。
また、そういうことを見つめ直したい。
私が唯一、揺らがないのは「生きていると何か良いことあるんじゃない?」と思える心だけだ。でも、それがあれば明日に夢を描ける気がするのだ。