先日、農産物直売所で唐辛子を購入した。真っ赤でツヤツヤのきれいな唐辛子だが、忘れて数日放置してしまったため、2つほどカビを生やしてしまった。慌ててザルにあけ、ベランダに出した。
洗濯物を干す時に毎日観察をした。唐辛子は柔らかく弾力があった購入時とは違い、たくさんのシワを作っていた。シワが出来る頃には味が凝縮され、カビの生えることのない強い体を得る。
自分の顔を鏡に映し、頬に手を添える。私の顔に刻まれたシワは強い体を得るための何かなのかもしれないと思った。
誇らしく。顔をあげて明日を見よ、わたし。
まはら三桃さんの『空は逃げない』を読んだ。まはらさんは数々の児童文学を書かれているのもあり、青春ものや成長物語を清々しい描写で表現するのに長けた作家だと思っている。この物語も期待を裏切らず、読後にほんのちょっぴり優しくなれた私がいた。
同姓同名の棒高跳びの選手を軸とした話は学生時代、スポーツをしていた私の心にスルっと入り込んだ。内容は割愛するが、今の私に与えられたような箇所があった。
それは「タメる」ことだ。
タメる。
「タメる」は高跳び用語だ。棒高跳びは力強く突きたてたポールの反発力でバーを跳ぶが、そのとき人の重さによってポールがしなる。そのしなっている間に選手は跳ぶための力を「タメる」のだ。タメでいかに大きな反発力を得るかが跳躍のカギになる。この先、どうなるかもどかしい一瞬であるが、楽しみでもある。
やがて爆発させるべきスパートのために、力をタメる。
今、私は心が迷子になっている。何に重きを置いたら良いのかわからなくなり、焦ってばかりで自分でも嫌になっちゃうくらいだ。
だが、この本をよんで、今の私はもしかしたら「タメる」状態であるのかもしれないと思えた。もう少しなのだ。もう少しで何かに手が届きそうな感覚があるが、それがなかなか触れない。もどかしい。
まあ、そういったこともトムとジェリーの追いかけっこのようなものと思えば楽しくなるだろう。捕まえられそうで捕まえられない。けれど、トムはあらゆる方法を考えながらジェリーを追いかける。笑っちゃうようなことを試すこともあるけれど、それも経験であるし、次につながるステップになるだろう。
まずは何事にもチャレンジできるような心を作る。
平穏な日々を送れることの喜びを私は知っているのだから、きっと、何でもできるだろう。